本研究では、高効率で高いエネルギー密度を示すリチウム空気二次電池の実現を目的とし、その空気極の反応に関する基礎的な検討を行っている。これまでの検討で、空気極を触媒を含まない炭素材料のみで構成することで、低過電圧で可逆性の高い、酸素/過酸化水素のレドックス対を利用した、新しいリチウム空気二次電池を提案している。H28、29年度の研究では、この空気極の反応メカニズムが、実際に酸素/過酸化水素のレドックス対によるものであるかという検証のために、グラッシーカーボンをディスク電極に用いた、RRDE測定による、反応電子数の評価と、酸素同位体ガス18O2を用いた、反応経路の特定を行い反応メカニズムが当初想定していた酸素/過酸化水素のレドックス対によるものであることを確認した。また、各種カーボン粉末をディスク電極に担持して反応電子数の検証を行ったところ、当初の予想に反して、反応電子数が2を超える結果を得た。しかしながら、その要因は電極内部におけるLi2O2の析出による見かけの反応電子数の変化によるものであり、実際の反応は二電子反応であることを確認した。一方、Li2O2が安定に析出する電極・電解液の組み合わせにおいては、可逆性が向上することを見出した。当初の研究目的は概ね達成されたことから、H30年度は、新たな検討として酸化物/過酸化物のレドックス対の電気化学特性を高濃度水溶液を用いて調査を行った。これまで使用したLiCl-LiOH系電解質溶液では電解質溶液の酸化分解が進行することから、LiTFSA-LiBETA系電解質溶液を使用したものの、正極活物質として使用したLi2MnO3の触媒活性により、水の酸化分解が促進されるために、酸化物/過酸化物のレドックス反応が進行しないことが確認された。今後、副反応の抑制検討が必要である。
|