研究実績の概要 |
本研究は,航空機や発電プラントで広く利用されているガスタービンの安全で効率的な運用の一助となることを目的とした研究である.ガスタービンの熱効率・性能向上を目指して,運転温度高温化のための技術開発が進められ,ガスタービンを構成する材料はより厳しい環境で使用され様々な損傷により機能を損なう危険性が高まっている.本研究では,大気中の微小な無機不純物(砂埃, 火山灰など)による材料の損傷に注目した.ガスタービンを構成する材料のうち,特に高温で使用される部材の表面には保護膜(遮熱コーティング:TBC)が施工される.TBCは材料の耐久性を維持しながら運転温度の高温化を可能にするが,近年,その運転温度は先に述べた不純物が溶融可能なまで高温化し,溶融した不純物(無機質燃焼生成物:CMAS)が付着・浸透することで,TBCの遮熱性能の低下とともにはく離や脱落を伴う損傷がより早期に発生している.運転温度の高温化が進められている中でのTBCの喪失は深刻な事態を招く.しかし,CMASによる損傷現象に対する理解とその対策は十分とは言えない.本研究では,(1)CMASによる損傷メカニズムを解明し,(2)損傷の程度を適切に評価する手法および(3)CMASに強いTBCあるいはその運用方法の提案を通して,問題解決を目指してきた. 2019年度は,(2)および(3)の課題に取組んだ.CMASの浸入によるTBCの微視的構造の変化の観察結果と各種材料特性の測定結果とを反映した数値解析モデルを作成し,実機で想定される負荷条件の下での熱応力の解析を行い,実際の損傷形態とのある程度の相関関係を明らかにした.この解析では,複雑な解析モデルの作成をより効率よく行う新たな手法を検討しそれを適用した.また,損傷したTBC表面に対して微小圧子を繰返し押込む試験を実施し,圧子深さと荷重変化から損傷を検出・評価できる可能性を示した.
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