研究課題/領域番号 |
16H06070
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
長谷川 真也 東海大学, 工学部, 准教授 (30580500)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱音響現象 / 熱効率 / 比音響インピーダンス / エントロピー生成 / 同期現象 |
研究実績の概要 |
細管流路の束(蓄熱器)に閾値を超える温度勾配を与えることにより熱音響自励振動が生じる.この現象を利用したものは熱音響機関と呼ばれる.熱音響機関の蓄熱器で実行される理想的なサイクルはカルノーサイクルであるため,理想状態においては蓄熱器におけるエントロピー生成はゼロとなる.しかし実際には様々な非線形現象並びに線形現象によってエントロピーが生成される.非線形現象に関しては,昨年度,熱音響機関を対象として強制同期時のエントロピー生成を観測した.現在も実験を繰り返すことで,非同期から同期に遷移する際のエントロピー生成を検証している.一方,線形現象においても散逸や振動流による熱輸送等に起因したエントロピーが生成される.散逸や振動流による熱輸送を低減し,熱音響機関の熱効率を高めるためには,熱境界層に対して適切な流路径を有する蓄熱器を設定した上で, ①蓄熱器において比音響インピーダンスが十分高い ②蓄熱器において圧力流速間位相差がゼロ の両方を満たす必要がある.ただし自励振動する熱音響機関内の音場は導波管長さや蓄熱器設置位置などの装置形状によって決定されるため,構築した装置において上述を満たせるとは限らない.そこで枝付きループ型熱音響機関を対象にループ内に「ばね,質量,ダンパー」からなる音場調整機構を設けることによって,蓄熱器位置で比音響インピーダンスと圧力流速間位相差を調整可能か数値計算によって検証した.ばね定数,質量,減衰定数を調整したところ,枝付きループ型熱音響機関の蓄熱器位置での圧力流速間位相差をゼロに近づけると同時に,高い比音響インピーダンスを保つことが出来た.また,この時の熱効率は音場調整機構がない場合と比べ向上した. また上述と並行して熱音響機関を対象に実験にて外力の強さと周波数を変化させた際のエントロピー生成を調査する目的から,音響ドライバーの構築を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に続き,熱音響機関を対象として強制同期時のエントロピー生成の測定実験を行うことで,非同期から同期に遷移する際のエントロピー生成を検証しており,エントロピー生成という測度を用いた熱音響現象の理解は進んでいる.また熱音響機関の熱効率向上に関しても研究を進めており,枝付きループ型熱音響機関を対象にループ内に音場調整機構を設けることによって,蓄熱器位置で圧力流速間位相差をゼロに近づけると同時に,高い比音響インピーダンスを保つことができ,熱効率の向上が可能であることを計算にて確認した.
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今後の研究の推進方策 |
熱音響機関を対象に計算を用いて比音響インピーダンス並びに,熱境界層厚さに対する流路径の比を変更しながら蓄熱器における単位長さ当たりのエントロピー流束密度生成と熱効率を解析する.数値解析により蓄熱器部においてエントロピー生成が最少となる条件を探索する. また熱音響機関を対象に外部加振器を用いて,外力の強さと周波数を変化させた際の蓄熱器におけるエントロピー生成を調査することで,エントロピー生成という測度を用いて,線形,非線形両面から熱音響現象の理解を深めたい.
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