研究課題/領域番号 |
16H06074
|
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
永井 萌土 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00580557)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 超並列 / 単一細胞 / 細胞操作 / パルスレーザ / 細胞内デリバリー / 誘電泳動 / 3次元電極 |
研究実績の概要 |
本研究では,超並列単一細胞操作技術に基づいて,均一かつ安定な細胞集団を構築するシステムを開発することを目的としている.1.細胞内デリバリー用のデバイスと2.細胞スクリーニング用のデバイスの両方に分けて研究を進めて,次の実績を得た. 1.超並列の細胞核内デリバリー用デバイスと細胞穿孔に必要な光学システムを提案した.レーザー光をサンプルに対してスキャンするための機械ステージを構築した.また細胞核のみを穿孔するデバイス作製に必要なPDMS/SU-8の接合強度を評価した.N2プラズマを利用して接合すると,500 kPa以上の接合強度を得られた.一般的に流体を輸送する際,これ以上の圧力を印加しない.そのためデバイス作製に必要な接合強度を満たしている. 2.誘電泳動プローブアレイの開発に必要な主要プロセスを確立した.作製したデバイスを用いて,電極の導通評価実験や細胞操作の特性評価実験を行った.得られた実績は3点である.①エポキシ樹脂のピラー構造物に金属薄膜を被膜し,3次元電極を作製できるようになった.さらに2層の犠牲層を用いたリフトオフにより,3次元電極への配線を作製した.②3次元電極をSU-8で被覆後,フォトリソグラフィによるパターニングで3次元プローブ形状を作製した.③作製した4×5の3次元のプローブアレイを用いて,誘電泳動力を利用した並列捕獲実験を行った.各プローブで細胞捕獲を平行して進行させた.これにより,10の2~4乗本のプローブによる超並列細胞操作の実現を示唆した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な2方面で研究を着手して,細胞評価にまで到達することができたため.
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は平成28年度に開発した個別技術の完成度を高める.さらに平成28年度に開発したデバイス(誘電泳動プローブアレイ)を主軸にして,安定細胞スクリーニングシステムを開発する. 1.細胞核内への一定量の遺伝子導入システムでは,超並列の細胞核内デリバリー用デバイスと細胞穿孔に必要な光学システムを完成させる.完成後は細胞内デリバリーの評価に移行する.細胞株に加えて,臨床応用に近い初代培養細胞(ヒトから最初に取り出した細胞)を用いて,発現量を評価する.適用範囲を拡大し,細胞種を変えても確実に一定量の遺伝子が導入できる原理を解明する. 2.マイクロウェル中の細胞の発現量を時系列的に自動記録し,細胞情報に基づいてマニピュレータアレイでピックアップする「安定細胞スクリーニングシステム」を開発する.個別のデバイスが確立できた後は,これらを連携して自動的に動かせるようにすることが必要となる.それを可能とするために,自動ステージ,画像処理,誘電泳動マニピュレータアレイに対する計測・制御システムを構築する.この計測・制御システムで,自動のXYθステージにて,ウェルアレイをスキャンし,数十時間での細胞の遺伝子発現量データを記録する.10の3乗細胞の時系列データを利用し,上部XYZステージも動作させて,安定細胞のみをピックアップする.
|