研究課題/領域番号 |
16H06075
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
真下 智昭 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 准教授 (20600654)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクロモータ / 超音波モータ / 圧電アクチュエータ / マイクロロボット |
研究実績の概要 |
マイクロロボットアームを開発するために,マイクロ超音波モータで駆動するマイクロ2リンク機構の研究開発を行った.このリンクはダイレクトドライブで駆動するように設計した.リンク機構の制御のために,マイクロ超音波モータとリンク機構のモデル化を行った.リンクの運動計測にはハイスピードカメラを用いることとした.高速撮影で,リンクの位置と姿勢の変化を画像処理的に追跡することで実験データを得て,モデルを実験で検証した.リンク機構試作機の運動は,モデルと概ね一致した. エンドエフェクタには,倍力機構を用いる予定であったが,試作してみたところ加工精度の問題で計算通りの機械的倍率が得られなかった.そこでメーカーの協力を得てマイクロギアを開発しマイクロ減速機の開発を行うこととした.マイクロ超音波モータにマイクロギアを取り付けて実験を行ったところ,最大1mNmという,このサイズとしては極めて高いトルクを発生することに成功した.全体の体積は大きくなるが,静的に約100倍のトルクを得ることに成功した. マイクロパンチルトカメラは,2個のマイクロ超音波モータを用いて全体の大きさが5mm以下になるよう設計した.カメラの方向を任意に操作するため,印可電圧のバースト波による制御手法を開発した.モータをドライバで制御する同期駆動システムの開発を行い,カメラの方向を概ね目標通りに動かす制御ができるようになった. マイクロ超音波モータの効率向上の研究に取り組んだ.従来は加工方法優先でステータの設計を行ってきたが,この1-2年の研究により,モータの加工技術が安定し,加工がモータの性能に与える影響もわかってきた.そこで,加工方法と,有限要素法による圧電解析を同時に設計する方法により,効率の改善を行った.電気的および機械的減衰を実験的に明らかにしてモデル化を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調または当初の計画以上に進んでいる.0.5mm角の極小モータを作ってマイクロ超音波モータのスケール法則を明らかにする研究は,2年目(29年度)に計画していた内容であったが,計画以上に早く進んで完了し,既に論文として発表している.またエンドエフェクタが大きな力を発生するメカニズムとして検討していた減速機の研究は,当初2年目の内容として考えていたが,2年目の前半にはおおむね実験を終え,既に研究成果をまとめることができている.マイクロロボットアームの開発も,二年目以降で計画していた内容であったが,2リンク機構をその基礎技術と位置づけ研究を進め,モータとリンクのモデル化を行い,試作機の駆動に成功し,実験を行って評価を完了することができている.マイクロパンチルトカメラの試作では,機械要素技術の開発は想定の範囲内で進んでいる.制御回路の開発に想定以上の時間を要したが,全体のシステムの開発は順調に進んでいる.マイクロカメラのオートフォーカスのアクチュエータとして,マイクロリニア超音波モータの研究開発を1年目から行ってきたが,電極取付時にモータ特性が低下する問題がわかり,調査に時間を要した.今年度,試作方法を見直したことで,開発に成功し実験を行って性能評価を完了させることができている. モータ効率の向上に関する研究は,当初の予定以上に時間がかかっている.電気的入力をより正確に評価できるようロックインアンプを用いた手法を採用するなど,計測システムの改善は進められた.しかしステータとロータの接触状態を改善するためにライニング材やマイクロ粒子などトライしたが,期待したほどの効率向上は得られていない.ステータやロータのサイズは極小であり,取扱いや評価が困難であるのが理由である,
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今後の研究の推進方策 |
マイクロロボットアームとマイクロパンチルトカメラを改善したうえで,これらを融合したシステムを構築する.現在のアームは,実験検証用の設計試作がなされているため,軸方向に大きいのが問題である.これは再設計で小さくすることが可能である.パンチルトカメラは,加工に基づいて部品設計を見直し,より精度良く組み立てができる方法を開発して,さらに精度を上げる.ロボットハードウェアができれば,マイクロカメラによるビジュアルフィードバック制御を行う.ハイスピードカメラを用いてリアルタイムで撮影し,その運動を評価できるようにする.モータは専用ドライバで制御し,対象物体を目標通りに移動するなどのデモを実施する.アーム・カメラ共に力学モデルを作り,駆動システムに実装して制御を行う.実験結果に基づいて,アームの動力学モデルを修正して改善を行い,実験結果でモデルの妥当性を評価する. マイクロ超音波モータの効率向上の研究は継続して取り組む.圧電材料と金属材料を重視して研究を進める.圧電素子は,薄くても安定して力を発生することが可能な,スパッタリング電極を用いた薄型圧電素子の調査を行う.金属材料は,加工性を定量化し,減衰特性,モータ性能を評価してマイクロモータに適した材料を明らかにする.これまで,加工方法を重視したステータの最適設計手法を採用してきたが,今後はこれに,有限要素法を用いた圧電解析によるステータの最適設計手法を併せて検討する.機械的Q値などに注目しながら,加工方法を再検討し,1mm角サイズにおけるマイクロ超音波モータのステータの設計手法を明らかにする.ステータとロータの接触状態を改善するため,メッキや,ライニング材の調査も行う.ステータとロータの間のマイクロ粒子についても調査を続ける.
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