研究課題/領域番号 |
16H06076
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小嶋 勝 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00533647)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノマイクロメカトロニクス / マイクロ・ナノデバイス / べん毛モータ / ナノピペット |
研究実績の概要 |
本研究は、1細胞~少数細胞からの解析技術が確立しつつある背景をふまえ、高精度な位置情報に基づいて細胞1 つ1 つを操作・計測・分離する技術の確立を目指すものである。具体的には、2 本のエンドエフェクタを箸のように器用に扱い細胞の剛性計測も可能な特徴的な2 本指マイクロハンドを基盤とし、局所化学環境の精密制御を可能とする高機能なエンドエフェクタと組み合わせることにより、1細胞~少数細胞「その場」直接操作・計測・分離システムの創出に取り組む。さらに、本システムを用いて、微生物を対象とした実証実験を行い、要求精度を満たすシステムを構築すると同時に、生命現象の未解決問題に資する。 本目的に対し、平成29年度は、空気圧による吸入と即応答性の高い電気浸透流による噴出を組み合わせ、局所性を高めたナノピペットを用いた細胞解析用リアルタイム局所化学刺激システムの拡張に取り組んだ。本システムは、単一の化学物質の電気制御型マイクロ・ナノピペットによる高時間分解能での噴出制御を実現していた。そこで、複数の化学物質による刺激を実現するため、ナノピペットの並列化を試み、マルチチャンネル局所化学刺激システムを構築した。さらに、構築したシステムの応用に取り組み、細胞の刺激、剥離、吸引による回収を確認した。また、天然の高効率ナノモータであるべん毛モータを対象として、構築したシステムを用いたべん毛モータの回転速度制御実験を行った。その結果、指定した速度でのべん毛モータの回転に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、細胞解析用リアルタイム局所化学刺激システムの拡張及び、「その場」計測・刺激・分離システムを用いたべん毛モータの解析に取り組んだ。複数の化学物質による刺激を実現するため、ナノピペットの並列化を試みた。具体的にはマルチバレル型のキャピラリーから作成したマルチチャンネルピペットを用い、マルチチャネル局所化学刺激システムを実現した。本システムにより、複数の化学物質を対象に噴出が可能となった。さらに、構築したシステムを用いてた細胞への応用実験を行い、細胞の刺激、剥離のための物質噴出による細胞の剥離、吸引に成功した。また、天然の高効率ナノモータであるべん毛モータを対象とした解析に取り組んだ。回転計測と溶液を微少量噴出可能なピペット操作とを統合し、回転計測情報を基にピペットの操作を出力するフィードバック型の回転速度制御システムを構築した。構築したシステムの実証実験として、Na+駆動型モータをもつ変異型大腸菌を使用し、外界のNa+濃度を操作することで指定した速度でべん毛モータを回転させる回転制御実験に成功した。以上のように,システムの拡張及び、細胞を対象とした検証実験を行い、良好な結果を得られており、計画が順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、構築したマルチチャンネル局所化学刺激を応用し、べん毛モータ回転制御機構の解析に取り組む。
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