本研究では、1細胞~少数細胞からの解析技術が確立しつつある背景をふまえ、高精度な位置情報に基づいて細胞1つ1つを操作 ・計測・分離する技術の確立を目指す。特に、2本のエンドエフェクタを箸のように器用に扱い細胞の剛性計測も可能な特徴的 な2本指マイクロハンドを基盤とし、局所化学環境の精密制御を可能とする高機能なエンドエフェクタと組み合わせることにより、1細胞~少数細胞「その場」直接操作・計測・分離システムを創出する。さらに、本システムを用いて細胞を対象とした実証実験を行い、要求精度を満たすシステムを構築すると同時に、生命現象の未解決問題に資する。 2018-2019年度は開発したシステムを用いた応用研究に取り組み、実用性の評価を行なった。具体的には、ナノピペットを用いたマルチチャンネル局所化学刺激による細胞操作に関して、その定量化に取り組んだ。接着細胞を対象とし、この接着を剥離可能な酵素であるトリプシンを局所噴出することで少数の接着細胞の部分的な剥離とその剥離範囲の制御を実現した。さらに、システムを拡張し、2本指マイクロハンドに搭載することで、組織片などの3次元的な細胞集団への刺激を可能とした。 また、拡張したシステムを応用し、べん毛モータ回転制御機構の解析実験を行なった。べん毛モータの動的環境変化に対する出力の変化の解析を行うため、局所化学刺激によって外界のNa+濃度を変化させ、モータの特性の評価を行なった。その結果、今回の実験条件ではモータ応答性が非常に早く、現行のモデルを裏付ける結果が得られた。
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