研究課題/領域番号 |
16H06077
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
寺尾 京平 香川大学, 創造工学部, 准教授 (80467448)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 1細胞解析 / ナノ加工 |
研究実績の概要 |
本研究は、臓器を物理的に切断し、1細胞サイズまで微小分割することで、立体的な臓器を空間的に「3次元分解」する新たな解析技術の確立を目指す。これまでにシリコンナノ加工技術により実現した独自技術であるシングルセルの一括切断技術をベースに、脳・腎臓等の様々な臓器を細胞レベルまで空間的に分割することで、多様な組成をもった微小臓器断片を得る(臓器空間分画技術)。得られた空間画分を網羅解析することにより従来の方法では到達できなかった臓器内の生体分子の定量的な3次元空間分布「臓器内生体分子3次元マップ」の解明に繋げ、医学・生命科学研究に革新的な解析技術を提供することを目的としている。 臓器空間分画技術による臓器微小断片の大量取得を期間内に実現するため、以下の項目について実験技術の構築と検証を行っている。(1)生体から摘出した臓器を物理的に分割する刃状構造体(ナノブレード)を有した空間分画デバイスの製作、(2)臓器サンプルへの正確なアプローチと確実な切断を実現する切断・送り機構の構築、(3)モデル臓器であるマウス脳・腎臓スライスを利用した、空間分画の原理実証とイメージングによる分画状態の検証。本年度はナノブレードアレイデバイスの微細化に加えて、切断効率を高めるための先端先鋭化や高機能化に向けた微小電極の統合に取り組んだ。また、有用性を評価するためマウス脳スライスをサンプルとして次世代シーケンサーを用いた解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臓器空間分画技術による臓器微小断片の大量取得を期間内に実現するため、以下の項目について実験技術の構築と検証を行っている。(1)生体から摘出した臓器を物理的に分割する刃状構造体(ナノブレード)を有した空間分画デバイスの製作、(2)臓器サンプルへの正確なアプローチと確実な切断を実現する切断・送り機構の構築、(3)モデル臓器であるマウス脳・腎臓スライスを利用した、空間分画の原理実証とイメージングによる分画状態の検証。本年度はナノブレードアレイデバイスの微細化に加えて、切断効率を高めるための先端先鋭化や高機能化に向けた微小電極の統合に取り組んだ。また、有用性を評価するためマウス脳スライスをサンプルとして次世代シーケンサーを用いた発現解析を行った。ブレードアレイデバイスおよび解析に関する進展は順調に得られている。一方で、臓器切断送り機構に関しては引き続き技術的課題が残っている。現在、切断を確実にすることを目的にブレード形状や電圧印加による切断、樹脂によるサポート層の形成に関して検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方策については、引き続き臓器空間分画技術による臓器微小断片の大量取得を期間内に実現するため、次の課題に並行して取り組む。(1)生体から摘出した臓器を物理的に分割する刃状構造体(ナノブレード)を有した空間分画デバイスの製作、(2)臓器サンプルへの正確なアプローチと確実な切断を実現する切断・送り機構の構築、(3)モデル臓器であるマウス脳・腎臓スライスを利用した、空間分画の原理実証とイメージングによる分画状態の検証。解析可能であることが確かめられたことから、現在解析に必要なサンプル回収の高速化に取り組んでいる。それに必要な確実な臓器スライスサンプルの切断に向けて、結晶異方性エッチングと組み合わせたブレード先端先鋭化や、金属膜をパターニングすることで形成した微小電極との統合に引き続き取り組む。また、3次元化に関しては、送り機構に技術的課題が多く存在するため、解決に向けて要素技術を確立していく。具体的には臓器形状を保ち、かつ凍結乾燥時のサポートとなる新たな樹脂レイヤーを利用した空間分画手法の開発を計画している。
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