研究課題
・多数の電界効果素子を一度に作製する原子層堆積装置機構を導入した。入念な条件出しの結果、低リークかつ高誘電率な絶縁体を作製することに成功した。また、作製効率(速度)を以前と比較し約9倍増大することに成功した。これにより電界効果素子作製期間のボトルネックが著しく短縮された。・磁気異方性の電界変調により誘起された磁気共鳴を用い、ナノ・メートル磁性体の磁気異方性、ダンピング定数を測定可能である。これまでに開発した同様の測定系を用いて、磁性体中の磁気異方性、ダンピング定数をより高い精度で求めることの出来る素子構造を考案した。ダンピング定数の素子径依存性を測定し、直径70ナノ・メートルの薄膜磁性体素子がほぼブランケット膜と同様のダンピング定数を有していることを世界で初めて明らかにした。・スティフネス定数の電界依存性を調べる為、準備段階として、スティフネス定数の膜厚依存性を調べた。スティフネスは膜厚により変化することが示された。界面で原子の接合数が変化することが直接的な原因であると考える。・スピン注入磁化反転時に、磁気異方性の電界変調効果が磁化反転電流に及ぼす影響を明らかにした。磁化反転時に電界効果の変調効率が同様の構造の素子の3倍大きく働いていることが示唆され、電界変調効率を向上する手がかりを得た。・電界を印加し、磁化ダイナミクスを誘起することにより、ナノ磁性体の磁化ダイナミクスの詳細を明らかにした。磁化ダイナミクス(歳差運動時)にはスピンは空間的コヒーレンシを保つが、試行ごとのコヒーレンシは失われることが判明し、ナノ磁性体の磁化ダイナミクス上の熱擾乱の影響を初めての明らかにした。・磁化反転時に消費されるエネルギを電界変調効率に対して見積もり、ジュール熱を充放電エネルギに比較して小さくするために必要な電界変調効率を、素子に必要な熱安定性などと合わせて解明した。
2: おおむね順調に進展している
電界による磁性変調効果の起源の解明、効果の増大、その応用を目的とした申請において、各項目について、順調に成果を出している。XMCDを用いた好感度な電界効果素子の測定、原子層堆積装置に多数の素子を導入する改良、磁気共鳴法を用いた磁気特性の好感度測定、等の測定系の立ち上げ、消費電力を低減可能であると考えられる、読み書き分離型の電界磁化反転素子のプロセスを立ち上げ等を行い、実際にそのポテンシャルを次年度(最終年度)に示す。
・上記確立した原子層堆積装置を用い、CoFeB組成、及び熱処理温度を系統的に変化させた電界効果素子について、その磁気特性の電界効果を調べる。上記確立した原子層堆積装置を用い、パラジウムやロジウム等のフェルミエネルギでの状態密度の大きな非磁性体材料について、その電界効果とそれらに関連した現象を明らかにすることも計画している。・観測した磁化ダイナミクスについての理論的考察を深め、磁化ダイナミクスを支配する有効磁界を明らかにする。特に、空間、試行毎のコヒーレンシの解釈が重要であり、これらが熱擾乱やマイクロマグネティック的な効果によりどのように変化するのかを明らかにすることが、電界による磁化反転の制御性の謎を解明するものである。・磁気異方性のみならず、ダンピング定数についても電圧により制御可能であることが示されている。但し、ダンピング定数の変化する電界効果素子には磁気異方性に対して、ある条件が存在することが判明した。ダンピング定数と磁気異方性はどちらもスピン軌道相互作用と密接に関連している為、理論的考察とともに現象を理解する。・XMCDを用い、界面でどの元素が磁気異方性とその電界効果に寄与しているのか、明らかにする。これらの項目を系統的に取り組むことにより、次年度(最終年度)目標を達成する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (37件) (うち国際学会 29件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
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Japanese Journal of Applied Physics - Selected Topics in Applied Physics
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