研究実績の概要 |
(1)CoFeB/MgO接合において、電界による磁気異方性変調量のCoFeB組成、膜厚及び、熱処理温度依存性を測定した。Co20%,Fe60%,B20%(Series A)及びCo40%,Fe40%,B20%(Series B)について、as depo及び200, 250, 300, 350, 400度の真空中熱処理を施した膜を用いてHall素子を作製後、ゲート絶縁膜を原子層堆積法により作製した。その後ゲート電極を作製し、電界効果素子を作製した。垂直磁界を印加しながらの磁気輸送測定により、各素子の磁気異方性の電界変調量を測定した。全ての条件で、CoFeB/MgO界面の電子濃度を増大させることにより、磁気異方性が減少した。Series Aでは、磁気異方性の電界変調量は熱処理温度を増大させることにより、as depoから増大し、250度の熱処理で最大値を取り、80 fJ/mの電界による変調量を得た。 (2)スピン波を用いてスティフネス定数の電界効果を測定した。CoFeB (1 nm)/MgO(1.6 nm)/ CoFeB (1.8nm)を核とし、自由層(1.8 nm CoFeB)の異方性磁界が約17 mT、接合直径68 nmの垂直磁化容易磁気トンネル接合を作製し、磁化方向と反平行方向へ垂直磁場を印加しながらマイクロ波電圧を印加することにより、磁気異方性の電界変調効果を用いて強磁性共鳴を励起する。その際の周波数掃引磁気共鳴スペクトルを直流電圧により検出した。Kittelモード及び第一励起モードの共鳴周波数の差は、磁性体のスティフネス定数に比例する。rf電圧に重畳させたdc電圧により磁気異方性の電界効果、スティフネス定数の電界効果を測定した。磁気異方性の電界変調量は59.0 fJ/mであった。スティフネスの電界変調量は1 V/nmの電界あたり、0.85 pJ/mであった。これは電界印加時の磁区観察実験により得られた値と比較して、オーダーで一致している。
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