研究課題
本研究では,誘電率や透磁率の値を人工的に制御できる「メタマテリアル」の概念を用いることによって,赤外・可視領域における光学迷彩の実現を目指す。その目標のために,平成28年度では,以下2つの研究を推進した。(1) メタマテリアルを内包した有機薄膜フィルム(メタマテリアルフィルム)の作製と評価(2) メタマテリアルフィルムを利用した3次元実装技術の提案と、それを用いた光学迷彩の実証(1)では,表面が平坦ではない領域にメタマテリアルを実装する技術を確立した。具体的には,メタマテリアルを内包した有機薄膜フィルムの作製・評価を行った。本フィルムの特徴は,サブミクロンの膜厚を有する有機薄膜フィルム内にメタマテリアルを実装することで,フィルムの物質定数(誘電率・透磁率)を所望の値にコントロールできることにある。(1)では,表面が平坦ではない領域にメタマテリアルを実装する技術を確立した。具体的には,メタマテリアルを内包した有機薄膜フィルムの作製・評価を行った。本フィルムの特徴は,サブミクロンの膜厚を有する有機薄膜フィルム内にメタマテリアルを実装することで,フィルムの物質定数(誘電率・透磁率)を所望の値にコントロールできることにある。(2)では,本フィルムを用いて、メタマテリアルを簡易に3次元実装できる技術を確立した。特に、直径数100μmのステンレスロッドに本フィルムを巻きつけるだけで簡易な遮蔽装置を実現できることを提案し、その実証を行った。これにより3次元の複雑な加工なしに,簡易なテーブルトップ型の光学迷彩を実現可能となった。
2: おおむね順調に進展している
従来の光メタマテリアルは,電子線描画装置や収束イオンビームを用いることで,ナノスケールの金属構造を2次元平面に並べることによって実現されてきた。しかし,光メタマテリアルをより柔軟に機能デバイスとして扱うには3次元実装の技術が必要不可欠となる。そこで,本申請研究では,表面が平坦ではない領域にメタマテリアルを実装する技術を確立した。まず,メタマテリアルを内包した有機薄膜フィルムの作製・評価に関する研究を行った。具体的には、膜厚500 nm程度の薄膜フィルムを作製する技術を確立し,実際に薄膜フィルム内に種々の光メタマテリアル(動作周波数:200-600THz)を作りこみ,フーリエ変換型赤外分光(FT-IR)での評価をとおしてフィルム自体の基礎データを集めた。その後,実験結果にフィッテングする形でComsol Multiphysicsによる電磁界解析を行うことで,フィルムの物質定数(誘電率および透磁率)を決定することに成功した。これにより,フィルムの物質定数(誘電率・透磁率)を所望の値にコントロールできる技術を開発した。次に、本フィルムを用いた応用例として,簡易な光学迷彩の実証を行った。具体的には、誘電率・透磁率を予め2次元的に変化させたフィルムを準備し、それを直径数100μmのステンレスロッドに本フィルムを巻きつけるだけで遮蔽効果を実現できることを提案し、その実証を行った。これにより3次元の複雑な加工なしに,簡易なテーブルトップ型の光学迷彩を実現可能となった。
メタマテリアルをデバイスとして利用する上での必須事項は,メタマテリアル自体の特性を外部信号により可変制御できることも必須となる。メタマテリアルはそれを構成する金属構造を決めると,物質特性もほぼ一意に決定される。そのため,外部信号による可変制御は何らかの機能材料と組み合わせて行われることが多い。本研究では,機能材料として液晶を選択する。MetafilmTM内部に液晶を導入し,電圧印加によって金属構造の周辺環境を変化させることで,メタマテリアルの物質定数をコントロールする。これによりフィルム単体で,広域可変の「反射防止膜」や「偏光フィルタ」としての機能を持たせたり,フィルム貼付面の光の反射特性を位相状態も含めて非自然的(非現実的)な挙動でコントロールできるなど,様々な応用先が考えられる。特に、本フィルムを種々の精密機器や建材に巻きつけることで、出現・隠伏がコントロールできる光学迷彩の実証も見据える。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 10件、 謝辞記載あり 13件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 21件、 招待講演 5件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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