研究課題/領域番号 |
16H06083
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
牧原 克典 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90553561)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁性ドット / メモリ |
研究実績の概要 |
本年度は、FePtナノドットスタック構造上部にAl電極を形成し、FePtナノドットの帯磁状態が電気伝導に及ぼす影響を評価した。尚、H2-RP処理後のAFM表面形状像から見積もった下層および上層ドットの平均サイズは、各々~5.1nm、~7.9nmであり、別途評価したFePtナノドットの基板法線方向における保磁力のサイズ依存性から、上層および下層ドットの保磁力は~2.5kOeおよび~0.5kOeであった。形成した2層ドット積層構造の電流-電圧特性において、4.5kOeの磁場印加により着磁後、逆向きに1.2kOeの磁場印加を施すと、電流レベルの顕著な低減が認められた。さらに同方向(初期とは逆向き)に4.5kOe印加後は、再び初期着磁時の電流レベルに戻ることが分かった。電流-電圧特性から、0.5 V時の電流レベルを着磁磁場に対してまとめた結果、初期着磁(4.5kOe)後、逆方向磁場を1.0kOeまで増加した場合、電流レベルは徐々に減少し初期電流レベルの~15%まで抑制される。その後、1.4kOeまでは着磁磁場を増大しても電流レベルの変化は認められないが、1.4kOe以上で電流レベルは徐々に増大し、4.5kOeで初期電流レベルまで回復する。これらの結果は、下層および上層ドットの磁化方向が平行から反平行に変化する際には、保磁力の小さな下層ドットのサイズばらつきが反映されるものの、1.0kOeで着磁したとき、完全に反平行になることで磁気抵抗が最大値を示し、反平行状態から下層ドットと同方向に磁場印加する際には、上層ドットのサイズばらつきを反映して平行状態が実現されたとして解釈できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、保磁力の異なる規則化合金FePtナノドット2層スタック構造において、4.5kOeで平行磁化状態を実現でき、1.0~2.0kOeを印加することで保磁力の小さな下層ドットの磁化方向のみを制御できることを明らかにした。さらには、予備実験として、ナノドットを埋め込んだSiOx膜を用いたNi電極MIM構造において、-0.8Vの定電圧印加により100μs以下の急峻な高抵抗化と、定電流印加による低抵抗化を組み合わせることで、3桁程度の抵抗比を有する安定したスイッチング動作が認められることも明らかにしており、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、異なる保磁力を有する磁性合金ハイブリッドドット連結構造を形成する。この構造では、上下ドットの磁化方向が平行に揃った時、トンネル磁気抵抗が最小となり、低抵抗状態が実現できる。そこで、外部磁場印加により磁化状態を制御し、AFM探針を用いて一次元連結合金ドットを介したトンネル電流を測定する。また、これまでに得られた結果を踏まえ、電界集中と磁化反転を利用した抵抗変化型メモリデバイス素子の形成に取り組む。具体的には、電界集中効果を高めるため、Niナノドットを超高密度形成した後、磁性ハイブリッドドットを形成する。さらに、抵抗変化誘起層として、これまでに実績のあるSiリッチ酸化膜を堆積する。これにより、電界集中効果に加えてハイブリッドドットの磁化反転を利用した超低電圧抵抗変化メモリ素子の実現を目指す。本研究で提案する抵抗変化メモリの動作確認に成功すれば、実現が難しいとされていた高速・低電力のテラビット・ランダムアクセスメモリの可能性が初めて示されることになる。
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