最終年度は、シリコン熱酸化(SiO2)膜上の極薄Fe/Si/Fe積層構造を外部非加熱でリモートH2プラズマ(H2-RP)処理することで、Fe原子の表面マイグレーション・凝集とともに、Siとの合金化反応が進行することで、Fe3Siナノドットが高密度・一括形成できることを明らかにするとともに、外部磁場印加に伴う電子輸送変化を磁性AFM 探針を用いて評価した。 具体的には、p-Si(100)基板上に膜厚~3.6nmのSiO2を形成した後、化学量論組成比がFe:Si=3:1になるように、Fe(~2.0nm)/Si(~2.0nm)/Fe(~1.5nm)積層構造を電子線蒸着により連続堆積した。その後、外部非加熱で、H2ガスのリモートプラズマ処理を施すことでナノドットを形成した。プラズマ処理時におけるH2ガス圧力は、~9、13、20Paとした。いずれのガス圧力でH2-RP処理した試料においても、AFMの表面形状像測定において平均ドット高さ~8.0nmのナノドットが面密度~5×10^11cm-2で一括形成できた。XRDによる結晶構造を評価した結果、9Paおよび13Pa処理により形成したナノドットは、Feシリサイドに起因する信号が認められないものの、20Paで処理した試料では、Fe3Si(220)に起因するシャープな信号が明瞭に認められた。さらには、磁性CoPtCrコートSi探針(HC=220Oe)を用い、Fe3Siナノドットの局所電子輸送特性を評価した結果(外部磁場は、試料直下に磁石を配置することで印加)、ドットの保磁力より大きな外部磁場を印加した場合、磁性コートAFM探針とFe3Siナノドットの磁化方向が揃うことで、抵抗が減少し、I-V特性のしきい値電圧が低減することを明らかにした。
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