研究課題
本研究の最終目標は、半導体の界面欠陥やドーパント原子が持つ局在準位を利用したスピン操作技術を確立し、CMOSテクノロジーに立脚した量子情報処理技術を創生することである。平成28年度は、測定系の感度向上とSOIデバイスの界面欠陥解析を目的として以下の2点を行った。(1)チャージポンピングEDMR法の高感度化MOS界面の欠陥解析手法であるチャージポンピング法と電気的に電子スピン共鳴を検出するElectrically detected magnetic resonance(EDMR)法とを組み合わせた「チャージポンピングEDMR法」を立ち上げ、この手法をシリコンMOSトランジスタに適用した。チャージポンピング過程で生じる過渡電流成分をローパスフィルタを用いて除去することで、高い感度(低雑音)でMOS界面のシリコンダングリングボンド(未結合手)の信号を検出することに成功した。また、サンプルホルダで生じる雑音を調査し、その改良にも着手した。(2)SOIゲート付PINダイオードの界面欠陥の解析電子の界面欠陥への捕獲、正孔との再結合といったチャージポンピングにおける素過程を実時間領域で観測できる実時間チャージポンピング法をSilicon-on-insulator(SOI)上に作製したゲート付PINダイオードに適用した。ゲートに与えるパルス電圧のパラメータを調整し、微小な出力電流を検出、解析することにより、界面欠陥に捕獲される電子の動的挙動を明らかにした。次年度以降は、本デバイスを用いて低温下におけるEDMR測定も予定しており、本研究成果は重要な知見となる。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的であったチャージポンピングモードでのEDMR測定法を立ち上げ、シリコン/シリコン酸化膜界面におけるダングリングボンドの信号を高い感度で検出することに成功した。また、次年度以降に用いるSOIトランジスタの界面欠陥の解析にも着手することができた。
EDMRの低温測定系を立ち上げ、継続してEDMR法の高感度化を目指す。また、界面欠陥に捕獲された二電子対の再結合過程を考慮した正確なチャージポンピング理論の構築に向けて、チャージポンピングの素過程の解析も進める。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 7件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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