研究課題/領域番号 |
16H06093
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸田 一郎 京都大学, 工学研究科, 講師 (20625511)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 制御工学 |
研究実績の概要 |
本年度に行った研究は大きく(1)実験装置の改修および製作(2)システム同定法に関する研究(3)制御系設計法に関する研究にわけられる. 実験装置の改修および製作に関しては,前年度に引き続いて車両型およびクアッドコプター型の実験機の製作と改修を行い,制御系設計を試行して調整容易な制御器設計に関する考察を行った.これに付随する成果として,制御系設計の過程で得られた制御器を新型の信号機に関する実験に利用した. システム同定法,すなわちシミュレータのふるまいを実機と適合するように調節する方法に関しては,前年度から研究している仮想的な制御器を利用してシミュレータのパラメータ調節を行う方法について発表するとともに,さらに考察を行った.考察の結果,シミュレータに安定化を補助するための仮想的な制御入力を設けることでシミュレータと実機の乖離が大きい段階でのシミュレータの調節を容易にできるという知見を得た. 制御系設計については,前年度に行った機械学習の分野における研究に関する調査をもとに確率的勾配降下法の応用について検討し,議論を行った.その結果,制御対象となるシステムのモデルを一旦制御容易化し,徐々に本来のモデルに戻しながら制御器設計を反復することで良好な設計が得られるという知見を得た.また,制御系設計への利用が有望と思われたスパース最適化についても検討を行い,最適な制御入力の生成をスパース最適化問題に帰着する方法を考案して検証を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに行った実験機の改修と製作の結果,さまざまな系における制御系設計の試行を行うことが可能となった.また,試行の過程で得られた付随的な成果を国際会議などで発表した. システム同定法に関する研究においては,仮想的な制御入力を設けることでシミュレータと実機の乖離が大きい段階でのシミュレータの調節を容易にできるという知見が得られたが,これはシミュレータを用いた制御系設計においても有効であると考えられる.また,得られたシステム同定に関する成果について,いくつかの学会発表を行った, 制御系設計に関しても,開発したスパース最適化を利用する方法がシミュレーションにおいて通常の制御法では最適な入力を得ることが難しいシステムに対し,最適性が高い制御入力を生成可能であることを確認し,成果の発表を行った.確率的勾配降下法の利用に関する研究についても今後さらに成果の発表を行う予定である. 以上のことから,計画と異なる点はあるものの研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの理論的な考察から,不安定なシステムに対しても,シミュレータと実機を結合した状態でシミュレータの調整を行うことで,シミュレータの精度を効果的に改善できることが示唆されているので,このアプローチについてさらに考察を行うとともに,これまでに製作した実験機を用いて検証を行う.また,このアプローチの,より直接的な制御系設計への応用について考察する. さらに,これまでに行った最適制御問題の数値解法についての数値実験から,制御器を調整する初期段階では,対象システムを単純化した制御が容易なシステムに対して制御器の調整を行い,徐々に複雑性を増しながら逐次調整を行うことで,比較的複雑な対象システムに対しても最適制御器の設計が行えるという知見が得られたので,このアプローチの理論的な考察を行い,より一般的なシミュレータに適用可能な制御系設計方法について検討を行う.また,考察の進展に応じて,このように設計された制御器がこれまでに製作した実験機,もしくはより制御が容易な実験機に対して有効かどうかを検証する.
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