本研究では,自動車の自動走行システムを対象とする.これは,たとえば,障害物回避のように環境情報(障害物の位置)をもとに,自動車を制御(加減速・操舵の制御)するものである.従来の研究では,「環境の予測」と「自動車の制御」の問題を別々に考え,それぞれに対して要素技術が開発されてきた.これに対して,本研究では,予測技術と制御技術を有機的につなぐ新技術として,予測値整形機構「予測ガバナ」を導入する. 本研究課題では,与えられた予測値を予測ガバナにより整形する問題を対象としているが,自動走行システムを高度化するためには,予測値そのものの精度も重要になる.そこで,本年度は,予測値を生成する部分に対して新たなアプローチを試みた.具体的に,以下の二つの成果を得た. 1.自動車をとりまく環境を意図的に変化させることで,精度の高い予測値を生成する問題を考えた.とくにそのひとつとして,加速度センサを搭載した自動走行システムを路面の凹凸形状を利用して制御する問題を検討した.路面形状は加速度センサを介して自動車に振動情報として伝達できるので,路面形状を適切に設計すれば,自動車の経路追従を実現できる可能性がある.これを確認するため,自動車コントローラと路面の凹凸形状の設計を行い,簡易な実験装置を用いて実験を行った. 2.自動走行システムにおいては,外部環境が動的に変化することがあるため,それを適切にモデリングする必要がある.そこで,近年注目されている「Neura ODE」とよばれるニューラルネットを用いて,動的システムをモデリングすることを試みた.そして,Neural ODEの有用性を確認するとともに,今後の課題を把握した.
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