研究課題/領域番号 |
16H06097
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水谷 司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (10636632)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 鉄道高架橋 / PRC(プレストレストRC)桁 / 大振幅振動 / 多点振動計測 / 有限要素法 / PRC桁-車両連成解析モデル / 動的解析 / MTMD |
研究実績の概要 |
複数の鉄道高架橋PRC(プレストレストRC)桁において現在発生している大振幅振動メカニズムの解明およびTMDを使った振動制御技術の開発を行うべく,初年度は継続的なキャンペーン型の多点振動計測と数値解析モデルを使ったTMDの有効性の検証を行った.計測には,レーザードップラー計を使ったシステムにより多点振動計測を行い,振動レベルとそのモード形を同定した.まず設計図をもとに有限要素法を使った数値解析モデルを構築し,その上で固有値解析結果が計測から同定したモード形と整合的になるようにモデルのアップデートを行った.さらに,PRC桁-車両連成解析モデルを構築し動的解析を行い,実際の車両走行時の動的応答をよく再現できるモデルを構築した.PRC桁についてはコンクリートのひび割れ・鉄筋の付着の非線形性を考慮したソリッドモデルを三次元汎用有限要素解析ソフトABAQUSにより構築した.実構造物の特性を正確に表現するため,桁のヤング率についてはシュミットハンマー試験により推定した値を導入し,また桁本体,横桁に加えて軌道スラブ・勾配コンクリート,レールまで詳細にモデル化している.車両モデルについては,当研究室がこれまで開発してきた実車両の応答を精度よく再現できる1車両27自由度の三次元バネ-マスモデルを拡張して利用した.これにより次年度より本モデルにTMDモデルを導入し,具体的にTMDのパラメーターを決できるその土台を構築できたと考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より想定していた通り,初年度に多点振動計測を実施し,車両と桁の連成解析モデルの構築にまで進めることができた.多点振動計測については,非接触で計測を実現できるレーザードップラー計を用いたシステムを用いたことにより,効率的に短時間でその動的応答を把握することができたと考えられる.実データからのモード形の同定については,かねてより蓄積してきた実験的モード解析の知識を用いることによって実現できた.その結果に基づき構築した連成解析モデルについても,実応答の車両通過中の強制振動部分,車両通過後の自由振動ともにうまく再現できたと考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
当初より予定していた通り,初年度構築したPRC桁-車両連成解析モデルにTMDモデルを加えて,最も振動制御効果の高いパラメーターを有するTMDを設計する.対象とするPRC桁の質量は附属物を含めて約706tであり,土木構造物で一般的に使用される主構造物の1 %程度の質量をもつTMDを用いるとするとTMDは7t程度になる.マスを鋼製とすると1 m3程度の大きな体積を要することになるため,現段階では鉄道高架橋の上り下りの中央両サイドのスペースにTMDの質量を分散して配置することを想定している.TMDの剛性および減衰のパラメーターの最適値は,PRC桁が非線形性を有することから,前年度構築したPRC桁-車両連成解析モデルに現実に可能な配置で分散させたTMDモデルを加えて数値解析的に推定する.単一の固有振動数をもつ1質点系のTMDでは桁の構造特性の気温依存性により通年で振動制御効果を期待することが困難な場合には,実構造物の複数のモードの振動制御のため用いられることがあるマルチマスダンパー(MMD)を用いて,気温や変位レベルに応じて異なるマスが動作するモデルを導入し,上記同様その最適設計を行う.TMDあるいはMMDの最適パラメーター確定後,詳細設計をして実橋梁上で試験をするためのTMDのプロトタイプの構築まで進める予定である.
|