研究課題/領域番号 |
16H06101
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
山崎 大 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 研究員 (70736040)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 全球河川モデル / 衛星高度計 / データ同化 / 数値標高データ |
研究実績の概要 |
本年度は、「全球河川モデルと衛星高度計を用いた水面下の河道深さ推定」に必要な地形データおよび衛星高度計データの収集し、整備・解析を行った。標高データについては、SRTM3 DEM (NASA ver2.1およびCGIAR ver.4)、Viewfinder Panorama’s DEM, ASTER GDEM (METI/NASA ver.2), ALOS World 3D DEM (JAXA ver.1)の5つを収集した。水面データについてはGlobal Surface Water Occurrence (EC-JRC)をダウンロードし、またOpenStreetMapの全水面レイヤをラスタ化したデータベースを構築した。森林被覆データについてはTree Cover 2000およびTree Gain and Lossデータ(GLCF)を取得した。また衛星レーザー高度計ICESatの地表面標高プロダクトGLA14の全データ(約2億地点)を収集し、データ形式の変換を行った。 収集したデータを整理・比較した結果、既存の標高データには大きなバイアスがあるために、そのままでは河川モデルと衛星高度計との水面標高の比較による水面下の河道深さ推定は難しいことが分かった。そのため、平成29年度は河道深さ推定アルゴリズムの準備作業として、標高データに含まれる誤差の補正を中心に行った。標高データ・水面データ・森林データ・衛星高度計データを組み合わせて、点状ノイズ・縞状ノイズ・絶対標高バイアス・植生バイアスの4つの誤差成分を分離・除去するアルゴリズムを開発し、それを収集した標高データに適用することで全球高精度の新たな標高データを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既往標高データに含まれるバイアスのために初年度は河道深さ推定アルゴリズムの開発には着手できなかったが、標高データの誤差補正はほぼ完了することができた。全球スケールで標高データに含まれる複数の誤差要因の分離・除去を実現したのは世界初の成果であり、開発した高精度標高データは本研究の目的である河道深さの推定の他にも様々な分野で利用される見込みである。誤差補正の手法および開発した高精度標高データについて学術論文にまとめてGeophysical Research Letters誌で査読中であり、受理されたタイミングでデータを公開する予定である。また2016年12月にAGU Fall Meetingにて開発した高精度標高データを紹介したところ、論文出版前にもかかわらずデータ提供要請を受けるなど注目を集めている。 河道深さ推定アルゴリズムの開発に関してはやや遅れているが、必要な基礎データの整備開発については世界をリードする成果を出しており、全体として研究計画はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
開発した高精度の新標高データを全球河川モデルに取りこむには、高解像度で地表水の流下方向を示す河道位置データを新標高データから再計算する必要がある。そこで、平成29年度は河道位置データの整備を進めるとともに、最新の水面データ等を用いて河道幅データの更新も行う。高精度標高データを元にして、河道位置データと河道幅データを最新もものに置き換えることで、全球河川モデルに含まれる不確実性を大きく低減することが可能であり、河道深さ推定精度の大幅な向上が期待できる。 次に、地形データを更新した全球河川モデルを用いて全球地表水動態シミュレーションを実行し、モデルが再現する水面標高を衛星高度計による観測値と比較する。水面標高の誤差が河道深さの不確実性で説明できる範囲に収まっていれば、河道深さ推定アルゴリズムの開発に進むことができる。水面標高に大きな誤差が残っていた場合には、地形データの見直しに加えて、河川モデルへの入力となる気象データの精度確認などの作業を行う。
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