研究課題/領域番号 |
16H06101
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 大 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (70736040)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 全球河川モデル / 衛星高度計 / データ同化 / 水文学 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に構築した高精度標高データMERIT DEMを全球河川モデルCaMa-Floodで利用可能にするために、河川ネットワークを表現する表面流向データの計算に取り組んだ。標高データ単独では表面流向を精度よく推定できないことが分かったため、最新の高解像度水域データであるG1WBMとGSWO、さらにベクター形式のオープン地図データOpenStreetMapの水域レイヤを統合した。高解像度で表面流向を精度良く自動計算するアルゴリズムは存在しなかったため、Fortran90を用いて独自の表面流向計算コードを作成した。とくに、乾燥域に多数存在する窪地を、標高データの誤差による凹領域から分離する際に土地利用などに応じて複数の閾値を用いるなどの工夫を行い、ほぼ手作業による修正なしに広域の表面流向データを計算が実現した。さらに、表面流向データと整合性が取れるように、2014年に開発した全球河道幅データGWD-LRを更新した。標高データ・表面流向データ・河道幅データを高精度化したことで、河川モデルと衛星高度計との水面標高比較が用意になり、本課題の最終目標である水面下地形の推定に取り組める状態になった。 また、衛星高度計を用いたデータ同化による河道深さ推定を実現するために、全球河川モデルのシミュレーション結果から作成した仮想的な水位観測データを用いて、河道深さを推定するOSSE実験(Observation System Simulation Experiment)を行った。その結果、背水効果によってローカルな水位が下流に影響を受ける地点では改善の必要があるものの、既存のデータ同化アルゴリズムを拡張することで河道深さ推定ができる可能性があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までに標高データ・河道網データ・河道幅データの整備が完了し、次年度からは本研究課題の目標である衛星高度計を用いたデータ同化による河道深さ推定に取り組める状態になった。河道深さ推定アルゴリズムのプロトタイプもOSSE実験によって構築しており、次年度からは実データを用いた河道深さの推定を行える段階になっている。 また、昨年度に開発した全球高精度標高データMERIT DEMの記述論文がGeophysical Research Letter誌に受理・掲載された。高精度標高データは、本研究課題の河道深さ推定だけでなく、幅広い地学分野で必要な基礎データであるため。論文受理後にWebPageでのデータを公開したところ、多数の研究者からデータ提供要請を受け、2018年4月現在で約240機関にデータを提供し、研究および教育に活用されている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、構築した高解像度の標高データ・表面流向データをアップスケール(低解像度化)して全球河川モデルCaMa-Floodと統合し、モデルが再現する水面標高と衛星高度計による観測値とを比較する。とくに大きな問題が見つからなければ、今年度に開発したアルゴリズムを適用することで、水面下地形の推定に着手する。まずは検証用の河道深さデータが利用できるミシシッピ川やメコン川などの単一流域で実験を行い、アルゴリズムの精度を確認した上で実観測データを用いるために必要な改良を行う。 また、今年度新たに開発した全球表面流向データについて学術論文にまとめ、データをWebPageで公開する。
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備考 |
開発した標高データを公開・配布するためのWebPage
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