昨年度までの研究開発で全球河川モデルと衛星高度計による水面標高の直接比較が実現し、本年度は衛星高度計との誤差情報を活用した水面化地形(河道深さパラメータ)の推定を行なった。水文地形データの高精度化で氾濫原地形の誤差が小さくなり、また最新の衛星水面データから河道幅パラメータの不確実性が減少したことから、河川モデルが計算する水面標高の誤差は主に河道深さパラメータと入力流出量データのみで説明できると仮定して、広域で河道深さパラメータを推定する手法を開発した。理想モデルと仮想観測を用いたOSSE実験によって、入力流出量データに不確実性があっても、それが小さくなる低水期間に着目することで河道深さ推定の精度をあげることを確認した。実際の衛星高度計データを用いたアマゾン川流域における実験では、河道深さパラメータの最適化によって、水位・浸水域・河川流量の3つの河川流況変数の再現性が良くなることを確認し、衛星高度計を用いた河道深さ推計手法の実性が立証された。 しかしながら、実際の衛星観測データを用いた実験では、河道深さをどんなに修正しても水面標高の精度が向上しない地点があることも確認され、モデルが用いている標高データについて、十分な誤差除去を行なった後でもまだバイアスが残っている可能性があることを発見した。また、背水効果が大きく影響する本流および支流合流部では推定精度に限界があることがOSSE実験によって確かめられた。さらに、現地観測の河道深さとの比較では推定したパラメータとの乖離が見られ、全球河川モデルが考慮していないサブグリッドスケールの河川地形のばらつきを考慮する必要性が示唆された。
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