研究課題/領域番号 |
16H06103
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
白崎 伸隆 北海道大学, 工学研究院, 助教 (60604692)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水系感染症ウイルス / 消毒耐性ウイルス / 物理的除去 / 凝集剤による不活化効果 / 凝集沈澱処理 / 急速砂ろ過処理 / 新砂 / 熟成砂 |
研究実績の概要 |
本研究では,組織細胞による培養が困難であることから,浄水処理性に関する知見がほとんど得られていないノロウイルス及びサポウイルスについて,ウイルス様粒子(VLPs)とVLPsの高感度定量法を併用することにより,ウイルスの粒子としての物理的な浄水処理性を詳細に評価することを目的とした.また,代表的な消毒耐性ウイルスについて,感染性評価手法と遺伝子定量法を併用したアプローチにより,物理的除去と凝集剤による不活化効果を区別した浄水処理性を詳細に評価することを目的とした. 今年度は,高い塩素耐性を有するコクサッキーウイルスB5型,高い紫外線耐性を有するアデノウイルス40型の凝集沈澱-急速砂ろ過処理性について,プラック形成法とPCR法を併用することにより,物理的除去と凝集剤による不活化効果を区別した処理性を評価した.また,プラック形成法による感染性評価が可能なA型肝炎ウイルスIB型,マウスノロウイルス1型についても処理性の評価を実施した.塩基度50%のPAClを用いた凝集沈澱処理においては,PAClによるアデノウイルス,コクサッキーウイルス,マウスノロウイルスの不活化は確認されなかった.一方,A型肝炎ウイルスについては,PAClにより不活化された可能性が示唆されたことから,物理的除去のみならず,凝集剤による不活化効果が処理性に寄与しているものと考えられた.新砂を用いた凝集沈澱-急速砂ろ過処理における上述したウイルスの処理性をPCR法にて評価したところ,使用する原水によって除去率は異なるものの,ほとんどの原水で約2 logの除去率が得られることが明らかとなった.また,熟成砂を用いた凝集沈澱-急速砂ろ過処理におけるウイルスの除去率は,新砂を用いた場合と同程度となったことから,砂ろ過に使用する砂の熟成の有無はウイルスの処理性にはほとんど影響しない可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,消毒耐性ウイルスであるコクサッキーウイルスB5型,アデノウイルス40型に加えて,プラック形成法による感染性評価が可能なA型肝炎ウイルスIB型,マウスノロウイルス1型についても,物理的除去と凝集剤による不活化効果を区別した凝集沈澱処理性を評価できた.また,複数の水道原水を用いた処理実験の実施により,凝集沈澱-急速砂ろ過処理における上述したウイルスの処理性を詳細に評価できたことから,研究計画は概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,培養不可能なノロウイルス,サポウイルスのVLPs作製,並びに作製したVLPsの基本特性の把握に加え,実浄水処理場におけるウイルスの処理性評価を念頭においたウイルス濃縮法(陽電荷膜とタンジェンタルフロー限外ろ過膜の併用による濃縮)の確立に取り組む.
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