本研究では,組織細胞による培養が困難であることから,浄水処理性に関する知見がほとんど得られていないノロウイルス及びサポウイルスについて,ウイルス様粒子(VLPs)とVLPsの高感度定量法を併用することにより,ウイルスの粒子としての物理的な浄水処理性を詳細に評価することを目的とした.また,代表的な消毒耐性ウイルスについて,感染性評価手法と遺伝子定量法を併用したアプローチにより,物理的除去と凝集剤による不活化効果を区別した浄水処理性を詳細に評価することを目的とした. 今年度は,昨年度構築したナノセラム陽電荷膜とタンジェンタルフローUF膜を併用したウイルス濃縮法を適用することにより,全国10カ所の水道原水におけるノロウイルス,サポウイルスを含む水系感染症ウイルス7種,並びに代替指標候補ウイルスであるトウガラシ微斑ウイルスの存在実態を明らかにすると共に,凝集-膜ろ過処理を実施している実浄水処理場におけるトウガラシ微斑ウイルスの除去性を評価した.対象とした水道原水においては,トウガラシ微斑ウイルスが水系感染症ウイルスに比べて10-100倍程度高い濃度で存在していることが明らかとなった.この結果を踏まえ,水道原水中に高濃度で存在するトウガラシ微斑ウイルスを対象とし,実浄水処理場におけるウイルスの凝集-膜ろ過処理性を評価したところ,1-1.7 logの除去率が得られることが明らかとなった.また,実浄水処理場を模した凝集-膜ろ過処理の室内実験の結果より,前凝集処理における凝集剤の添加濃度及び種類がウイルスの処理性に大きく影響することが明らかとなり,処理条件によっては4 log以上の高い除去率が得られることが確認された.
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