研究課題/領域番号 |
16H06105
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
五十嵐 豪 東北大学, 工学研究科, 助教 (10733107)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | セメント化学 / 乾燥収縮 / C-S-H / 層状構造 / 収縮低減 |
研究実績の概要 |
本研究は,コンクリートの乾燥収縮に伴うコンクリート構造物の耐久性の低下の抑制によるコンクリート構造物の長寿命化を実現し,建設に伴うエネルギー消費量の低減や,安全な放射性廃棄物処分施設を建設することを目的として,コンクリートを構成するセメントペースト中の主要な成分であるカルシウムシリケート水和物(C-S-H)の層状構造の変化による乾燥収縮メカニズムを,層状ケイ酸塩鉱物の層間水の減少に伴う分子構造の変化という科学的見地から明らかにすることである。H28年度は,実験的検討に取り組み,試験体の作製および乾燥・湿潤に伴う水蒸気吸着量,乾燥収縮・膨潤量の測定を進めた。 1.水和物の合成および圧縮成型:セメントペースト中に存在する水和物と関連する水和物の合成および圧縮成型を行った。このとき,合成した水和物は,トバモライトグループ(Plombierite),C-(A)-S-H,エトリンガイト,モノサルフェートである。同様に,高水粉体比で常に撹拌することで,完全に水和が進んだセメントペーストスラリーの作製を行った。 2.水和物の乾燥収縮性状および各種物性の把握:得られたエトリンガイト,モノサルフェートの乾燥・湿潤試験を行い,異なる湿度環境下での乾燥収縮量,層間距離,水分量の変化を測定した。 上記の検討の結果,セメントペースト中に存在する水和物であるエトリンガイト,モノサルフェートの乾燥・湿潤プロセスにおける水蒸気吸着性状および乾燥収縮・膨潤挙動について明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,下記の進捗状況からおおむね順調に進展していると判断した。 セメントペースト中に存在する水和物と関連するC-(A)-S-H,プロビエンライト,エトリンガイト,モノサルフェートの合成および圧縮成型を行った。同様に,高水粉体比で常に撹拌することで,完全に水和が進んだセメントペーストスラリーの作製を行った。 エトリンガイト,モノサルフェートの異なる温度における水蒸気吸着性状を実験的に取得した。
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今後の研究の推進方策 |
1.水和物の合成および乾燥収縮性状の測定 セメントペースト中に存在する水和物の合成および圧縮成型を継続して進める。このとき,合成する水和物は,トバモライトグループ(Plombierite,Tobermorite,Riversiderite),ジェナイトグループ(Jennite, Metajennite),CSH(I, II),C-S-H,エトリンガイト,モノサルフェートを予定している。同様に,高水粉体比で常に撹拌することで,完全に水和が進んだセメントペーストスラリーの作製を行った後,各水和物をペレットダイスを用いてコイン状の圧縮成 型体に加工して各種実験に供する試験体を作製する。圧縮成型体の乾燥試験を行い,異なる湿度環境下での乾燥収縮量,層間距離,水分量の変化などを測定する。同様に,天然に存在する類似のケイ酸塩鉱物として天然トバモライト・ジェナイトや粘土鉱物のモンモリロナイト,カオリナイト,クロライトについても測定を進める。 2.層状ケイ酸塩鉱物の収縮メカニズムの解明とC-S-H の分子構造モデルの構築 上述の実験から得られた水分量,層間距離,乾燥収縮量の関係を整理し,層状ケイ酸塩鉱物の収縮メカニズムを明らかにする。このとき,層間距離の変化と乾燥収縮量を結び付けるためには,水和物の粒子中に存在する層状構造の定性および定量を行う必要があるが,本研究の水蒸気吸着等温線(水分量と湿度の関係)に対して,拡張BET 理論を適用することで特定する。拡張BET 理論による分析から得られたC-S-H の層状構造変化について化学ポテンシャルを変数とした数理モデル化を行う。
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