研究課題/領域番号 |
16H06106
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
舘 知宏 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50586740)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 折紙 / 自己折り |
研究実績の概要 |
本研究課題では、折りの自律的プロセスによって機能的な立体形状を作る「自己折り」で空間構造物を実現する。独立した部品を外から組み立てるのではなく、折りたたんだ状態から展開することで機能性を発揮することに特徴がある。29年度は下記の研究内容を中心に行った。 A. 自己折りの解析と制御 繰り返し構造を持つ折紙パターン(折り紙テセレーション)の自己折り可能性について、28年度に提案した手法を用いて解析を行い、パターンの対称性の変更やガジェット(部分的折り構造)の適用により、変形モードの数が増えたり減ったりする現象を発見した。具体的には、(1)既知のパターンでは、同じグラフ構造を持つパターンであっても対称性により自己折り可能なものと不可能なものが生まれることを明らかにした。(2)また、既存のパターンから新しいパターンを生成し、変形機構を保ったまま折りたたみ時の収納性を高めるパターン生成手法の提案を行い、この手法の場合組み合わせ的にモードが増えることを確認した。これらの知見から、自己折りの制御のためには、「モードの分岐現象をいかに避けるか」という課題が本研究の最重要の課題として位置づけた。 B. 構造バリエーションのデザイン・ファブリケーション 空気圧を用いた自己展開アクチュエーションの実現のため、筒形構造の端部を閉じるための構造についてデザインを行った。この問題は、剛体パネルの「ふいご」を作る問題である。これは数学的厳密性を持っては不可能であることが知られているが、材料の1%程度の弾性変形を許すことで、「ふいご」は実現可能であることを示した。また、平坦状態にある機構を3Dプリントして作り、立ち上げて立体化可能とするシステムを実装した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度までに、自己折りを制御する手法の候補を絞り込み、また製造方法の道筋を整えるという当初の計画どおりに研究は進んでいる。前者については、既存の折紙テセレーションと新規のテセレーションの解析を通じて、パターンの調整によりモードの増減をさせることで、自己折りの制御をするという手法、後者については、平坦状態にある構造物を3Dプリントし立ち上げるシステムとして、29年度までに概ね準備が整ってきている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降では、(A)自己変形のモードを減らすことで制御可能とするためのより具体的な形状処理手法を提案すること、(C) 自己折り制御のためのガジェット生成システムや、パターンから実際の材料でファブリケーションするためのCAMシステムをCADプラグインとして開発することを計画している。
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