日本では戦後に植樹されたスギを主とする樹木が伐採時期を迎え、木材使用量を増やす必要性が生じており、CLTによる木質高層建物への需要が世界的に高まっている。しかしながら、CLT木造はRC造や鉄骨造と比べて宿命的にエネルギー吸収性能が小さいという重大な問題が明らかになっている。その耐震性向上に向けて、建物に剛性・減衰を付加する制振技術(ダンパー)は極めて有用と考えられる。本研究では、そのような背景のもと、高層建物用の高性能なCLT制振架構を開発し、それを用いるための制振設計法を提案することを目的としている。 4年目の研究としては、十字形およびT字形のCLTによる柱梁接合部を対象とした強制変形実験を行い、その力学的挙動を把握した。耐震架構とロッキング架構の両方を対象とし、前年度に実施した柱脚支持部におけるM-θ関係の評価法を応用して、柱梁接合部におけるM-θ関係の包絡線を評価する手法を提案した。提案手法は実験結果で得られたM-θ関係の包絡線を概ね再現できることを確認した。 また、数値解析による検討として、制振壁の簡易時刻歴応答解析モデルに関して、バイリニアと線形粘性要素という簡易なモデルの足し合わせで表現する手法を提案した。既往研究の手法では、解析モデルの諸元を求める際に試行錯誤が必要であったが、本提案ではモデル作成時の条件を追加することにより、上記の試行錯誤を回避している。提案する手法で作成した簡易モデルは、精解のモデルを概ね再現できることを確認した。
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