研究課題/領域番号 |
16H06108
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉田 真宏 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70624592)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 建築構造・材料 / 耐震 / 補強 |
研究実績の概要 |
成熟社会における建築ストックの有効活用を命題に,鋼骨組を対象として,事業継続性を担保する低負荷な耐震補強法を開発している.本補強法の特徴は,既存骨組の損傷限界を決定する脆弱箇所の変形を集中的に低減し,耐力の上昇を巧みに抑えながら骨組全体の耐震性能を高めることにある.一方,現行設計法の考え方に拠れば,耐力や剛性の向上が補強の主な効果として評価されるため,脆弱箇所の変形低減を設計で十分に考慮するには,新しい設計法が必要となる.本研究では,脆弱箇所を含む建物の一部を対象とした変形低減効果の評価実験環境を整備し,数値解析による検討と合わせて,低負荷な耐震補強法に見合った設計法の開発とその実証に取り組む. 平成28年度は,頑強な部材に頼らず既存鉄骨構造の耐震性(耐力,剛性,弾性限界,安定変形限界)を飛躍的に向上する手法として,補強部材の取り付けによって生じる応力の再分配等に着目し,既存部材への大幅な応力上昇を巧みに避けつつ変形性能を向上させる補強機構の性能を評価した.提案機構の性能把握を目的とし補強機構の取り付けによる既存骨組の脆弱な箇所の変形性能の変化を再現できる部分架構実験手法を新たに考案し,条件設定のため予備実験を実施した.予備実験の結果を踏まえて数値解析モデルを構築し,解析結果に基づき,補強機構の取り付けによる応力分布の変化を再現できる1層2スパン試験体を設計した.今年度は補強前の部分架構試験体の実験を実施し,耐力劣化性状や最大変形能力および架構内の応力分布を正確に把握した.さらにこれらの情報を数値解析モデルに反映し,補強機構の諸元を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は試験体2体の実験を実施して,提案機構の性能を把握する予定であったが,条件設定のための予備実験を行った結果,当初の予定と異なる仕様で床スラブの構成効果を試験体に付与しなければ,目的とする低負荷耐震補強の効果の実証ができないことが判明した.そのため,予備実験の結果を反映した解析モデルを用いた数値解析により試験体仕様を検討したのちに,試験体を設計し補強前の性能を実験で把握した.数値解析による補強試験体の仕様を追加で検討する必要が生じたため,当初予定していた補強後の試験体の実験は実施できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に構築した数値解析モデルを利用して,補強部材の取り付けによって生じる応力の再分配等検討し,補強機構を設計する.補強の対象とする部分架構に補強機構を取り付け,数値解析で想定する補強の効果を実験で確認するとともに,補強前と補強後の損傷の進行度や最大変形能力の差を定量的に把握する.梁要素からなる簡易な骨組モデルを構築し,提案する補強機構の解析モデルと組み合わせ,骨組頂部の変位を増分させる弾塑性静的増分解析および地震応答解析を実施する.補強による変形能力や梁端部の正曲げ塑性回転角の低減を評価するとともに,建物全体変形と脆弱箇所の応答量に注視して補強の効果を統計的に評価する.梁端部の全塑性化後の補強効果の検証する部分架構モデルを構築し,梁端部の塑性変形角,層間変形角及び耐震補強機構の耐力の関係式の導出するとともに,局所変形の制御を指向する設計法の開発に着手する.
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