軽量かつ効率的に大きな無柱空間を覆う大スパン軽量構造は、体育館やショッピングモールや大型倉庫など大きな内部空間が必要とする構造物によく利用されている。これらの構造物の多くは、大型集客施設であり、災害時の避難所としても指定されるため、非常に重要な社会的存在でもある。大スパン軽量構造は、スパンのわりに非常に軽く、固有振動数が低いため、地震被害が少ない。 一方で、通常の構造物より柔らかく、大変形が起こりやすいため、強風による被害は国内外でも数多く報告されている。 未曾有の強風に備え、大スパン曲面軽量構造の風による振動特性の解明と、より信頼性の高い耐風設計法の確立を目的として、本研究では風洞実験により検証を行いながら、新たな理論的及び数値的連成解析手法の提案を目指している。上記の研究目的に対して、R1年度の研究においては、以下の研究成果が得られた。 ・G県H市にあったHPシェル屋根に対して、等価剛性を利用した固有値解析結果と、振動実験との比較を行った。 ・せん断変形が支配となる構造物を対象として、地震時の(変位・速度・加速度)応答より各層の剛性を同定する方法を提案した。さらに、長期モニタリング中にある階の応答値が計測不能となった不測なケースを想定し、既往研究の直接同定法を利用した剛性同定法を提案した。ここで、固有値解析で得られた振動モードを利用して、欠測階応答値の推定方法を提案した。 ・LiDARによる距離計測およびSLAMアルゴリズムによる位置同定を利用して、複雑形状を有する構造物の形状を計測する手法を提案した。
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