2019年度は、継続してデータを収集するとともに、集大成としてこれまで得られた知見があらわれた理由・機序について検証を進めた。
1.住宅内スケール: 事業期間内に収集したこれまでの検証結果が、エリアやサンプルの拡大によって揺れないか、また季節差によってどのような違いがあるかという点を注視して検証を進めた。その結果、座位時間と室温の関係については地域差が大きいことが確認されたため、モデルを再構築してその関係性について探った。その結果、日レベルの室温と座位時間の関係性が弱まったものの、個人レベルの断熱性能との関係性等がより明確となるモデルが得られている。動脈硬化指標についても関係性が示されている。特に夜間頻尿については明確な関係性が得られたことから、泌尿器系の専門家からも助言を得て季節別のモデルと、過活動膀胱リスク別のモデルを検討し、夜間頻尿リスクの高い者ほど室温の温暖化からの恩恵を受けやすいことが明らかとなっている。
2.地域環境スケール:前年度の検証によって、花壇による居場所形成効果が示唆されたことから、花壇の効果を明らかにすべく花壇の有無による影響検証を目的とした被験者実験を実施した。学生被験者11名の歩行時の脳波と歩行速度の繰り返し測定によって、花壇による歩行継続効果を検証した。その結果、花壇を設置した際は、歩行時の速度が低下していた。既往の知見に基づくと興味関心が高まるコースとなっていることを意味している。また、脳波によるマルチレベル検証では、花壇のあるケースでは興味度が5.7%高く、眠気度が1.1%低いことが確認された。以上より、花壇が外出行動や居場所形成の寄与にもつながっている一因が示された。
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