本研究は、東アジアの視点に立ち、木造建築の生産システム論の創生に向け、東アジア各国・各地域の木造建築について、社会的・技術的・自然環境的な側面から総合的に比較する研究構想の一環として実施するものである。中世から近世の日本と同時代の中国・台湾・韓国における木造建築の構造について、基礎情報および論考を集積・把握し、それぞれの変遷および相関関係を比較検討することで、技術的な側面から研究の全体構想の根幹を構築することを目的とする。 初年度となる2016年度は、中国における繋貫の発生とその後の展開を明らかにしたうえで、近世初頭の日本の寺院建築と比較考察した。その一部は、Tomohiro Suzuki “What Did Chinese Chuancha-fang Influence the Timber Architecture of East Asia” ISAIA2016、としてまとめた。さらに、上記の変革の地域的な広がりを検証するため、17~19世紀の台湾の木造建築について現地調査した。 また、国際研究会として、第1回東アジア木造建築史研究会(於 奈良文化財研究所)を主催し、日本・中国・韓国における最新の研究成果の共有を図った(研究協力者:韓志晩(韓国明知大学校)、丁YAO(中国天津大学)、李暉(奈良文化財研究所))。東アジア各国の最先端の研究成果の発表ののち、各国の建築史研究における位置づけに関して講評をおこなうことで、各国の建築史研究に対する相互理解を得ることができ、研究の手法や考察の視点などの詳細な検証、そして東アジアの比較研究の可能性の探求など、様々な観点から活発な議論を展開することができた。
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