本研究は、東アジアの視点に立ち、木造建築の生産システム論の創生に向け、東アジア各国・各地域の木造建築について、社会的・技術的・自然環境的な側面から総合的に比較する研究構想の一環として実施するものである。中世から近世の日本と同時代の中国・台湾・韓国における木造建築の構造について、基礎情報および論考を集積・把握し、それぞれの変遷および相関関係を比較検討することで、技術的な側面から研究の全体構想の根幹を構築することを目的とする。 最終年度となる2019年度は、2020年2月に中国・敦煌で国際研究会を開催する予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大のため、延期することとなり、本課題も2021度に繰り越した。国際研究会は現地における開催は不可能と判断し、2020年7月オンライン開催にて開催した。発表は以下の2題である。鈴木智大(奈良文化財研究所)「19 世紀の日本における建築図面の使用法」孫毅華(中国・元・敦煌研究院) 「敦煌の唐代壁画にみられる2種類の垂脊頭瓦飾りの変遷と名称に関する考察」 それぞれ、中国・丁YAO(天津大学)、韓国・韓志晩(明知大学校)から講評をおこなった。現地において開催できなかったのは遺憾であるが、オンライン開催にしたことにより、国内外より50名以上の参加者を得ることができたのでは、大きな収穫であった。研究会開催を受け、本課題で開催した研究会の記録を『東アジア木造建築史研究会記録1』として2021年3月に刊行した。 本課題で得た問題意識、構築した国際的な研究体制は、2020年度より開始した基盤研究B(代表:鈴木智大)「古建築用語の相互訳及び英訳を通した系統的把握による東アジア木造建築史の基盤構築」に継続する。
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