研究課題
ワイル半金属NbAsの大型単結晶を合成し、阪大強磁場センターにおいて様々な磁場方向下で量子振動を測定し、位相を解析することによりワイル点ペアを含む系のランダウ準位構造について詳しく調べた。その結果、磁場方位によって系のトポロジーは変化しないにも関わらず、量子振動の位相は0かπのどちらかの値を取ることと、その間の変化が不連続であることを観測した。この結果は、ゼロモードの数と量子振動の位相との間に従来系のような単純な対応関係が成立しないことを意味しており、ワイル半金属ではフェルミ準位によって量子振動の位相が変化するために、ベリー位相との対応が非自明であることを示している。また、様々な結晶軸方向に試料を切り出して針状に整形し、形状効果を排除した状態でカイラルアノマリーに起因する負の磁気抵抗効果の測定を行った。その効果は面間において明瞭に観測され、角度依存性の測定から結晶軸(電場方向に平行)からわずかにずれた磁場方向で極小値を取る結果が得られた。これは、カイラリティの異なるワイル点を結ぶ方向に対して磁場方向と電場方向との射影成分を考えると定量的に説明できるものであり、これまで1次元系でのみ考えられていたカイラルアノマリーを3次元系に拡張した場合に期待される結果である。3次元系では、電場と磁場によってカイラル粒子のエネルギー縮退を破った場合には電場磁場方向とは関係なくキャリアポンピングが起こりうることを示唆する結果でもある。これらのように、3次元系のワイル粒子について従来の理論研究で予想されていなかった基本的な性質を実験的に明らかにすることに成功した。
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
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JOURNAL OF CRYSTAL GROWTH
巻: 487 ページ: 92-95
10.1016/j.jcrysgro.2018.02.023
Physical Review B
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