研究課題/領域番号 |
16H06120
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 幸奈 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (10596076)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光電気化学 |
研究実績の概要 |
本申請課題では、金属ナノ粒子の組織化状態をボトムアップ手法で大面積にわたって制御することで、金属ナノ粒子間に生じるホットスポットという、光のエネルギーを光の回折限界を超えたナノ空間に局在化させることができる、高効率な光エネルギー変換場を、実用的なレベルの面積で実現することを目的としている。 実現に当たっては、金属ナノ粒子の精密な組織化状態の制御と、ナノ空間への色素の空間選択的な配置制御の両方の技術を確立する必要がある。 金属ナノ粒子の精密な組織化状態の制御について、2018年度は、2017年度に確立した、粒径の大きな球状金ナノ粒子の疎水化法および単層粒子膜作製法を、棒状金ナノ粒子(金ナノロッド)にも適用を拡大することに取り組んだ。その結果、水分散金ナノロッドコロイドを、アルカンチオールを保護剤として疎水化する手法を確立することに成功した。これを用いて、球状金ナノ粒子と同様の手法で単層粒子膜を作製することに成功した。部分的には、配向配列の制御もできていることから、本手法の今後のさらなる改善によって、目的が達成されることが期待される。 また一方、ナノ空間への色素の空間選択的な配置制御については、2016年度にポリピロールのナノ重合法を確立することによって成功している。そこで2018年度は、他の高分子についても同様にナノ重合法の確立に取り組んだ。その結果、本手法が光電気化学的な特性が異なる種々の高分子について適用可能であることを明らかにした。さらに、反応限界波長はモノマーの種類によって異なることを明らかにし、ナノ空間への色素の空間選択的な配置制御技術確立に向けての前進が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の最終到達目標は、球状金属ナノ粒子よりも強い光捕集効果が期待できる形状異方性金属ナノ粒子を用いて、大面積で配向配列を制御した二次元アレイを作製することである。またその二次元アレイの、極めて強い光捕集効果が得られるナノ空間に、空間選択的に色素などの光活性物質を配置することで、光エネルギーを有効に活用できるシステムを構築することである。 2018年度は、水分散コロイドを出発物質に、アルカンチオールを保護剤とした疎水性金ナノロッドの大量合成法を確立し、Langmuir-Blodgett法で単層粒子膜の作製にも成功した。高分子を保護剤や展開補助剤等に用いずに疎水性相互作用を制御してこれを実現できたことは、順調な進捗であると言える。また部分的にではあるが、配向配列の制御にも成功していることから、今後実現すべき大面積に渡る配向配列制御に対する指針が得られている点からも、研究が順調に進展していると言える。 さらに、高分子色素を含む種々の光電気化学的特性を有する高分子を、光捕集効果が得られるナノ空間に空間選択的に配置する手法が確立できたため、光エネルギーを有効活用するシステムを実現する準備が整ったと言える。これらの進捗を総合的に判断して、本課題は概ね順調に進展していると結論できる。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の最終到達目標である、配向配列を制御した形状異方性金属ナノ粒子の二次元アレイを大面積で作製すること、またそれによって極めて強い光捕集効果が利用できる光反応場を構築すること、さらに実際に光反応を観察することによって実証を行うことの遂行を目指す。前年度までに、形状異方性金属ナノ粒子の単層粒子膜を大面積で作製することに成功しているため、この技術を改善することで、大面積に渡る配向配列の制御を可能にする技術の確立を行う。また、前年度までに確立した、強い光捕集効果が期待できるナノ空間に種々の光電気化学的特性を持つ高分子を配置する技術を応用し、光活性物質を極めて強い光捕集効果が利用できる反応場に配置することで、高効率な光エネルギー変換システムの実現を目指す。 これまでに得られた成果を社会に還元するために、学会発表や原著論文の発表を積極的に行っていく。国際学会における招待講演を、現時点で3件(中国、アメリカ、タイ)予定している。その他の国内外における学会発表も多数予定している。これまでに得られた成果を原著論文として発行するために、現在3報を執筆中であり、これの投稿を行う。加えて最終年度である2019年度に得られた成果も新たに執筆し、投稿する予定である。
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