金や銀などの金属ナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴という現象に基づく光捕集効果を示す。これによって、金属ナノ粒子表面近傍のナノ空間では、光エネルギーを入射光の数倍から数百万倍へと増強できることが理論計算によって示されている。よって金属ナノ粒子は太陽電池や光触媒、人工光合成等、あらゆる光反応の高効率化に有効な材料であると期待されている。そこで本研究では、その効果を最大限に利用するために、金属ナノ粒子の形状や配向配列などの様々なパラメータが光捕集効果にどのように作用するかを明らかにし、大面積に渡ってナノレベルで精密に制御したり、色素をナノ空間に効果的に配置する技術の確立を行った。 具体的には、従来困難とされていたアルカンチオールを保護剤とした大粒径の球状金ナノ粒子の大量合成法を確立し、大面積に渡って単層膜を作製する手法を確立した。これによって、共鳴波長の制御や増強特性の制御が容易に可能になった。 また金属ナノ粒子表面近傍の、光捕集効果が強く表れるナノ空間に、空間選択的な高分子色素の配置をナノレベルで実現する手法を確立した。これによって、光電変換デバイスや可視光応答型光触媒としての応用が期待されているが、いまだ詳細なメカニズムが不明だったプラズモン誘起電荷分離における酸化力発生メカニズムの一部を明らかにすることに成功した。 これらの技術によって、現状ではせいぜい数倍程度の増強度しか得られていない、金属ナノ粒子の光捕集効果が飛躍的に増大して利用できることが期待される。
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