研究課題/領域番号 |
16H06121
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
且井 宏和 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70610202)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / 化学気相析出 / 放電プラズマ焼結 / 硬質 / シリカ / 炭化ケイ素 |
研究実績の概要 |
本研究は、粉体粒子表面の気相成長技術の構築し、これにより得られる表面改質粉末を高速で焼結することにより、硬質ダイヤモンド焼結体を創出することを目的とする。前年の平成28年度までに、有機化合物系前駆体を用いた回転CVD法によりダイヤモンド粉末粒子上に炭化珪素の均質なコーティング層を形成し、組成や膜厚制御の検討を行ってきた。ダイヤモンド粉末へのコーティング、およびそれにより得られる複合(コア・シェル)粉末の焼結挙動や焼結体の各種特性に対して、原料となるダイヤモンド粉末の粒子径は重要なパラメータの一つである。平成29年度は、異なる粒子径のダイヤモンド粉末に対して炭化珪素層のコーティング条件を明らかにし、ダイヤモンド粒子とコーティング層が焼結条件や焼結体の微細組織および各種特性に及ぼす影響を調べた。具体的には、平均粒径が2、7および25ミクロンのダイヤモンド粉末に対して炭化珪素のコーティングを行い、成膜条件と膜厚の関係を系統的に調べることで、これらのダイヤモンド粉末に15-120nmの均質で緻密な非晶質炭化珪素層を被覆することができた。得られた複合(コア・シェル)粉末にシリカ粉末を加えた混合粉末を放電プラズマ焼結法により焼結を行うことで、炭化珪素層とダイヤモンド粒径が焼結組織に及ぼす影響を調べた。この結果、1) 炭化珪素層を被覆しない場合、焼結後の微細組織においてダイヤモンド粒子表面とシリカの界面に空隙が形成するために高密度化しなく、このような傾向は粒子系が小さいときに顕著になる、2) 炭化珪素層を被覆することにより、ダイヤモンド粒子とシリカは緻密な界面を形成し、高密度で高硬度なダイヤモンド基複合体が形成される、ことが分かった。このように平成29年度は、焼結挙動、微細組織および密度に及ぼすコーティング層と粉末粒子径の影響に関する系統的な基礎的知見を構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定は回転CVDによるダイヤモンド粉末へのSiC層のコーティングにおいて、高純度のSiC層を作製する予定であったが、HMDSを原料としたコーティング粉末や焼結体の微細構造・解析を進める過程で、SiC層中に炭素が過剰に含まれることがわかった。これにより、前駆体の再検討や気化・成膜条件の最適化、および原料供給機構の改造を行った(平成28年度)。これによりによりSiC層のコーティングに時間を要したが、平成29年度で焦点を当てた焼結体の合成や評価についてはおおよそ計画通りに進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までに、回転CVDによるダイヤモンド粉末へのSiC層コーティング技術を確立し、これを用いた放電プラズマ焼結により高密度化できることを明らかにするとともに、コーティング層の構造と焼結体の機械的特性との相関に関する基礎データを蓄積し、議論を展開できるようになってきた。今後は、ダイヤモンド粉末表面層と粉体粒子のサイズや充填状態の最適化を試みることで、密度や硬質特性の向上を狙う。同時に、連続積層技術による組成や構造を制御したコーティング層の高機能化を試み、従来法では必要条件であった超高圧環境や金属助剤が不要な低加圧 下での硬質ダイヤモンド焼結プロセスを確立する。
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