本研究は、粉体粒子表面の気相成長技術の構築し、これにより得られる表面改質粉末を放電プラズマ焼結(SPS)法により高速で焼結することにより、従来よりも低加圧なプロセスにより硬質ダイヤモンド焼結体を創出することを目的とする。平成29年度までに、ダイヤモンド粉末表面へのセラミックス層の気相成長技術を構築し、この気相成長技術を多様な粒子径のダイヤモンド粉末に応用することで、セラミックスコーティング層やダイヤモンド粒子径が焼結組織および密度や硬度などの各種特性に及ぼす影響を調べるとともに焼結挙動を検討してきた。最終年度となる平成30年度は、「セラミックス層の傾斜機能化」に挑戦するとともに、これまでに得られた知見をまとめ、セラミックスコーティングによるダイヤモンド粉末の易焼結化とMPaレベルの加圧焼結法による高硬度ダイヤモンド複合材の焼結原理と設計指針を検討した。「セラミックス層の傾斜機能化」に対して、具体的には炭化珪素とシリカの積層構造を有する複合層のコーティングを試みた。Si系有機化合物を原料に用いた回転CVD法により平均粒子径2ミクロンのダイヤモンド粉末粒子に対して炭化珪素層を被覆し、その後連続的にシリカ層を被覆することに成功した。現状では、得られたセラミックス複合層を有するダイヤモンド粉末をSPSにより高密度化することは困難であったが、最表面シリカ層の厚膜化またはシリカ粉末や他の易焼結性粉末を少量添加することで、従来のダイヤモンド/セラミックス複合材よりもダイヤモンド成分を高密度化することが期待でき、MPaレベルの加圧焼結プロセスにおける高硬度ダイヤモンド複合材の設計指針を示すことができた。
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