研究課題/領域番号 |
16H06122
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三木 恒久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20415748)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 木材 / 塑性加工 / 複合材料 / 局所物性 / 熱物性 / 誘電加熱 |
研究実績の概要 |
本研究では、木質素材の流動成形技術を高度化する目的で、マイクロ波・高周波などの電磁波を応力負荷時に作用させることを提案する。木材加工の電磁波利用は、既に曲げ加工や圧縮(圧密)加工で実績があり、誘電加熱による均一(内部)加熱や高速昇温条件によって加工時間の短縮だけでなく、良好な成形品が得られるとの報告がある。樹脂などの改質剤を導入した木質素材について電磁波条件を適切に選択することによって、流動成形の高速化だけでなく、繊維方向への変形能を向上できる可能性もある。また、マイクロ波照射では、水酸基などを直接活性化させて加熱するため、少ない樹脂率や組織を選択した局所加熱によって、木質素材の繊維・組織構造を損なわずに大変形を付与でき得る。 以上の狙いのもと、今年度は昨年度に引き続き、熱硬化性樹脂を含浸した木質素材の誘電損失特性と誘電加熱挙動の検討を実施してきた。熱硬化性樹脂を導入した木質プリプレグの微細構造変化については、熱分析、FTIR、X線回折、NMRなどによりデータを蓄積した。木質組織毎の物性とその温度依存性の評価について走査プローブマイクロスコープ(SPM)を用いた検討を行った。 結果として、熱硬化性樹脂などが導入された木質プリプレグは外部寸法が大きくなっており、それは、細胞壁や細胞間層の膨潤が起因していることを示した。さらに、微細レベルでは、セルロース結晶の格子面間隔が小さくなっていることから、結晶以外の領域に樹脂が侵入したと推察した。この木質プリプレグは、線膨張係数が未処理木材と異なり、樹脂の細胞壁の侵入量によって特定温度までの線膨張係数が小さくなることがわかった。誘電損失も大きな値を示し、この状態で高周波を印加することによって、数秒で大変形が生じることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に必要な設備はすでに充足し、サンプリングや測定条件などの微細構造・組織計測のためのノウハウも蓄積できており、良好に研究は進捗している。最終年度に向けて、本技術を応用したサンプル作成のため基礎的な面、応用の面での双方の検討を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて、結果を総括する意味で、特許化と論文化に注力する。高周波を印加して誘電加熱状態で材料試験が実施できる昨年度開発の小型内部加熱装置について、協力企業との今後の取り扱いについて協議するとともに、サンプル試作するための形状をもつ金型への本機構の導入方法を検討する。場合によっては、共同での知財化を行う。
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