木質流動成形技術の高度化を目指して、成形プロセスにおける高周波の利用を検討してきた。特に、樹脂含浸木材中のプレポリマーを直接励起することによる内部急速加熱の実現と、それによる塑性加工における成形性向上の実証を行った。また、変形メカニズムを解明するために、木材とプレポリマーなど改質剤との相互作用、組織構造変化、局所物性変化を検討した。そして、工業技術として展開を図るべく、成形品の試作や高生産化を実現する金型装置への応用を図った。主な成果は以下の通りである。 (1)誘電特性に及ぼす含浸プレポリマーの影響:低分子熱硬化樹脂プレポリマーを含浸した木材の比誘電率、誘電損失特性を把握した。プレポリマーによって比誘電率は変化し、熱硬化によって比誘電率、誘電損失は小さくなった。赤外分光法などを併用し、含浸樹脂を同定する手法ならびに樹脂の硬化率を誘電特性から評価する手法の確立を目的にデータを蓄積している。 (2)誘電加熱特性と変形挙動:27.12MHzの高周波による誘電加熱挙動に及ぼす樹種、含水率、プレポリマーの影響についての基礎的データを取得し、圧縮変形における誘電加熱の影響を検討した。高含水率ならびにプレポリマー含浸した木材は高周波による内部加熱が促進された。一方で、樹種の影響は明確ではなかった。同様の圧縮率における変形抵抗は高周波を作用させた場合の方が低く、かつ、より大変形しやすくなった。 (3)微細構造評価と変形メカニズムの検討:ナノインデンテーションによる局所ヤング率と、Thermoporometryにより膨潤状態での木材のナノ空隙を評価する手法を検討した。更なるデータの蓄積が必要ではあるが、現在のところ木質細胞の変形がナノ空隙の量的な増加に影響する傾向が認められており、局所物性との関係について調べている。 (4)薄肉成形・高速プレス成形への展開:企業との共同研究による実証を開始した。
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