研究課題/領域番号 |
16H06123
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森戸 春彦 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (80463800)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 結晶成長メカニズム / 生成条件 / クラスレート単結晶 |
研究実績の概要 |
シリコン(Si)クラスレートとは、Si 原子がカゴ状に結合した物質で、その特異な構造に起因した新しい特性の発現に期待が集まっている。特に、ナトリウム(Na)を内包したSi クラスレート(Na-Si クラスレート)はNaの濃度によって電気的特性が金属から半導体まで変化することが知られており、太陽電池材料や熱電変換材料など幅広い分野での応用が期待されている。しかし、本物質における従来の合成手法では微細粉末状の試料しか作製することができず、学術的研究および工業的応用のためにも、本物質の結晶育成技術が求められている。そこで本研究では、Si クラスレートの新しい結晶育成技術として金属フラックス法を確立することを目的とした。 初年度は、Na-Sn融液をフラックスとして用いることで、Na-Siクラスレートの結晶成長を試みた。また、加熱温度や加熱時間など様々な合成条件のもとで試料を作製して、Na-Si クラスレートの生成条件を最適化するとともに、合成条件が試料の形態やクラスター構造などに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。400~700℃の温度範囲でNa-Siクラスレートの合成を試みた結果、Type IとType IIのNa-Siクラスレートの生成温度条件を明らかにした。また、Na-Snフラックスの組成比がNa-Siクラスレートの結晶成長に大きく影響することを明らかにし、本物質の最適な結晶成長条件を見出すことができた。また、得られた結果と各元素の状態図をもとに、本手法におけるSi クラスレートの結晶成長メカニズムを考察したところ、Na-SnフラックスからのNa蒸発とNa-Snフラックス中での徐冷凝固の二通りのメカニズムによって、Na-Siクラスレートの結晶が成長することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、様々な合成条件のもとで試料を作製して、Si クラスレートの生成条件を最適化するとともに、合成条件が試料の形態やクラスター構造などに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。当初の予定通り、合成条件によりType IとType IIの二通りのNa-Siクラスレートを作り分けることに成功し、それぞれの結晶成長条件を明らかにした。また、得られた結果と各元素の状態図から、本手法のメカニズムを明らかにすることができ、本研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本手法における結晶成長メカニズムが明らかになったため、単結晶育成装置を作製し、Na-Siクラスレート単結晶の大型化を試みる。また、本物質は内包元素とケージ元素の組み合わせによって多彩な物性を示すことが知られているため、元素置換によって新規Siクラスレートの創製を目指す。
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