研究課題
本研究では加圧下におけるプロトン伝導度測定を行い、電気伝導度のドメインマップの未把握ポテンシャル領域である高圧水蒸気下での基礎的な物性評価を行った。水蒸気圧20 bar、600℃~200℃にてBaZr0.8Y0.2O3-δ(BZY20)の電気伝導度を交流2端子法にて測定した。水蒸気圧0.019barでの電気伝導度と比較すると約5倍の高い伝導度を示した。BZY20のプロトン溶解の平衡定数から20 barのプロトン濃度を見積もるとBZY20、1molあたり0.2molのプロトンが溶解しており、結晶内にプロトンが理論上最大で溶け込んでいると予想される。得られた電気伝導度と見積もったプロトン濃度から移動度を見積もった結果、0.19 barで得られたプロトン移動度と一致しており、低温で高い活性化エネルギーを示すプロトン会合の効果が観測された。すなわち高圧下にてプロトン伝導度は濃度の増加により上昇するがプロトンの移動度は変化しないことが示唆された。さらにプロトンがドーパント濃度まで溶解しないLa0.9Sr0.1YbO3-δ(LSYb)において10 barにて電気伝導度を測定した結果、250℃で0.019 barでの電気伝導度と同じ値を示した。LSYbにおいて0.019barではプロトン溶解量は1molあたり0.009 molで飽和しており、水蒸気圧を10 barまで増加させても250℃ではプロトン濃度が増加しないことが明確になった。さらにプロトン伝導体中の遷移金属であるMnの価数を詳細に調べた。母体としてBaZrO3、SrZrO3、CaZrO3の3種類のプロトン伝導体中のMnの価数をESRにて明らかにした。その結果、CaZrO3ではMnは2価、3価で存在し、SrZrO3ではMnが3価、4価、BaZrO3ではMnが4価で存在していることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
初年度は研究計画に従って高圧水蒸気下で電気伝導度評価の研究が遂行できた。しかしながら評価できたプロトン伝導体がBaZr0.8Y0.2O3-δとLa0.9Sr0.1YbO3-δの2種類であり、今後さらに多くのプロトン伝導体の評価が必要である。一方で次年度検討予定の遷移金属の価数同定が一部既に遂行しているため上記の評価とした。
研究計画に従って次年度は水蒸気分圧勾配、水素分圧勾配、酸素分圧勾配下でのプロトン伝導体中の水素電流と酸素電流、電子電流を実験的、解析的に調べることでポテンシャル勾配の効果について明らかにする。さらにプロトン伝導体へ正孔もしくは電子伝導性を付加させた電極材料を開発するためプロトン伝導体に遷移金属を添加した際のプロトン、正孔、電子伝導特性を明らかにする。
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