有機薄膜太陽電池においてシリコン太陽電池並みのエネルギー変換効率を得るべく,検討が進められている。中でも,材料の新規開発による性能向上は盛んに議論されているが,構造に関しては平面構造からバルクヘテロ構造に移行して以来,進展していない。p型/n型有機半導体がナノスケールで櫛歯状に相互に貫入した3次元ナノ櫛歯構造は,従来のバルクヘテロ構造では達成できなかった高効率電荷分離と広接合面積による高変換効率が期待でき理想的とされているが,ナノ櫛歯構造へ有機分子を充填する技術がなく実現されていない。本研究では,超臨界流体を用いた有機分子の高アスペクト比構造への充填技術を発展させる。 昨年度までに極薄連続膜が形成できるようになったことから,今年度は成長機構の解明と3次元構造への埋め込みに取り組んだ。薄膜成長中には,核発生後に高さ100nm以下の極薄の島が形成され,横方向成長することにより所望の極薄膜を形成する様子が見られた。一方で,高さ数十umの島も同時に形成されやすく,この島の形成を抑制することが極薄連続膜形成には重要である。これには,基板温度が有効であることを明らかにした。3次元構造への埋め込みについては,条件の検討により,アスペクト比10のトレンチ底部にアントラセンの堆積を可能とした。
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