研究課題
申請者は最近、半導体と金属錯体を融合したハイブリッド材料を光触媒として、可視光照射により常温常圧下でCO2をギ酸へと還元することに成功した。特に、窒化炭素(C3N4)を半導体部位として用いた場合には、33000を超える高い触媒回転数と高選択的ギ酸生成が達成されている。これまでに報告されたハイブリッド光触媒はいずれもギ酸を主生成物として得るものだが、CO2は2電子還元を受けることにより、工業的価値が大きいCOへも変換できる。本年度の研究では、CO2をCOへ還元する新規ハイブリッド光触媒の開発を目的とした。金属錯体部に、CO2をCOへ選択的に還元するRe(I)触媒をRu(II)光増感部と連結した二核錯体、半導体部にC3N4を用いた結果、還元剤トリエタノールアミン存在下、可視光によりCO2を主にCOへ触媒的に還元することに成功した。さらに、錯体の吸着密度を増大することで光触媒活性が向上することを見出した。具体的には、ゾルゲル法を用いてアモルファスSiO2をC3N4上に高分散担持すると、錯体の吸着量は最大で107 μmol g-1に達し、未修飾時と比較して4倍となった。その結果として、光触媒活性は錯体の吸着量に応じて直線的に増加し、未修飾のものと比べて2.5倍の活性向上に成功した。論文はChemSusChem誌に発表した。本年度のもう一つの大きな研究成果は、従来困難であった水溶液中での高効率CO2還元に成功したことである。C3N4を従来のメソポーラス型からナノシート型へとすることで、錯体―C3N4間の強固な吸着が実現できることを発見し、そしてその結果として、アルカリ水溶液中を含む広いpH範囲で駆動できるCO2還元光触媒系の構築に成功した。触媒耐久性は従来の3倍の2100に達し、ギ酸生成に対する選択率も70%弱から最大で99%となった。論文はAngew. Chem.誌に発表した。
2: おおむね順調に進展している
研究開始時に設定した目標「新規な金属錯体触媒の導入による高性能化・高機能化」を実現し、成果をChemSusChem誌に発表した。また水を電子源とした二酸化炭素還元光触媒系構築に向けた重要な知見を取得し、成果をAngew. Chem.誌に発表した。以上の事実から、研究は順調に進展していると判断した。
光触媒活性の向上には、C3N4の電荷分離能、可視光吸収能をさらに高める必要がある。また水を電子源とした二酸化炭素還元系構築に不可欠な水の酸化反応系の検討も重要となる。このような観点から、平成29年度の研究ではバンド端位置(エネルギーレベル)を制御したC3N4系半導体の新規合成、および他の半導体あるいは金属ナノ粒子との複合系の構築を行う。さらには、未だ未検討となっている二酸化炭素還元反応条件下での水の酸化反応に関する知見を得ることを目指す。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 9件、 招待講演 9件) 備考 (1件)
ACS Appl. Mater. Interfaces
巻: 9 ページ: 6114~6122
10.1021/acsami.6b15804
Journal of Materials Chemistry A
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1039/C6TA10541F
ChemSusChem
巻: 10 ページ: 287-295
10.1002/cssc.201600661
Angew. Chem., Int. Ed.
巻: 56 ページ: 4867-4871
10.1002/anie.201701627
Phys. Chem. Chem. Phys.
巻: 19 ページ: 4938-4950
10.1039/C6CP07973C
http://www.chemistry.titech.ac.jp/~ishitani/member/kmaeda/Home.html