研究課題/領域番号 |
16H06131
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大山 順也 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (50611597)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 固体触媒 / 双晶 / 形態 |
研究実績の概要 |
これまでに双晶Auナノ粒子の触媒作用の開拓を進め,双晶構造の効果ついて理論計算を用いて調べてきた.また,Au以外の金属での粒子構造制御を検討し,分子吸着によるナノ粒子の形態制御の可能性とその機構についての研究を進めてきた.H30年度では,金属としてPtナノ粒子の形態制御とAgナノ粒子への双晶構造の導入を進めた.また,粒子構造の新しい解析手法の開発に取り組んだ.具体的には,本研究で開発したガス吸着を利用した担持金属ナノ粒子触媒の調製手法を用い,調製条件(ガス種,ガス濃度,温度)を種々検討することで,Cube,Cuboctahedron,Octahedron,Sphereの4種の形態のPtナノ粒子を作り分けることに成功した.Ptナノ粒子の形態による触媒作用の効果を,シンナムアルデヒドの水素化反応において調査した.その結果,粒子形態によって触媒活性と選択性が大きく変化することが明らかになった.また,Auと同様に双晶界面エネルギーの低い界面Agについて,分子吸着を利用した双晶構造の導入を検討した結果,Agナノ粒子においても双晶構造を導入できることが明らかになり,また,双晶構造によって一酸化炭素の酸化反応活性が向上した.以上の結果から,Auのみならず他の金属種についてもガス吸着を利用したナノ粒子の結晶構造や形態制御が可能であり,さらに,触媒調製条件によって粒子形態を変えることができることが示唆された.粒子構造の新しい解析手法の開発においては,双晶Auナノ粒子について,電子顕微鏡での双晶構造解析のために人工知能技術を用いた画像認識を導入した.実像データ内で双晶構造を高い精度で判別する機械を作成することに成功している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度の研究では, 特にPtとAgについてナノ粒子の結晶構造や形態制御を進めてきた.その結果, Ptナノ粒子については,従来の含侵法をベースとした触媒調製において前処理ガスを変化させるだけで,4種の異なる粒子形態を調製することができ,Agについては双晶構造を導入できた.つまり,非常に簡便な手法で担持金属ナノ粒子の形状および結晶構造の制御が可能であることを示した.さらに,これらの粒子形態制御に伴って発現する表面によって,触媒活性や選択性の向上を達成した.粒子形態制御メカニズムについては,各種分析手法を用いて調べることで,面による分子吸着エネルギーの違いと分子吸着による表面再構成によって,粒子の形態が変化することが明らかになってきた.ナノ粒子形態制御研究の基礎技術である構造解析においても,ナノ粒子の形態を解析するための電子顕微鏡像解析手法の開発も進めることができた.H30年度の目的をおおむね達成しているため順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
ナノ粒子表面への分子吸着による粒子形態制御について,金属種や触媒調製条件を変化させることで,触媒材料と触媒作用を展開することを計画する。 平成30年度までに,双晶Auナノ粒子の反応性の開拓,理論計算を用いた双晶構造の反応性についての研究,Au以外の金属での粒子構造制御の可能性の探索,分子吸着によるナノ粒子の形態制御機構の解明,粒子構造の新しい解析手法の開発を進めてきた.最終年度となるH31年度では,これまでに進めてきたナノ粒子表面への分子吸着による粒子形態制御について,金属種や触媒調製条件を変化させることによって触媒作用と触媒材料を展開するととともに,これまでの研究成果発表を進めていく。 金属種については,双晶界面エネルギーが低いAu,Ag,Cu,また,触媒としてよく用いられる白金族金属を研究対象とし,単一金属および合金ナノ粒子の形態を,分子吸着を用いることで制御し,粒子形態が触媒作用に与える効果を明らかにしていく。触媒反応では,環境浄化反応および化成品合成のための酸化および水素化反応を進める. 触媒調製条件の検討では,一酸化炭素以外の分子を用いることで,COを用いた場合と異なる粒子形態の発現を進める.H30年度までの研究でCO以外の分子を用いた形態制御について着手しており,本研究で開発した調製手法でさまざまな粒子形態を調製できることが明らかになってきている.本手法での簡便な粒子形態制御と調製した触媒の活性評価を進めることで,粒子形態制御手法の汎用性と重要性を示していく.
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