研究課題/領域番号 |
16H06133
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
西田 浩之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60545945)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマアクチュエータ / 流体制御 / 大気圧放電 |
研究実績の概要 |
推力(誘起流の反力)と推力電力比の観点からプラズマアクチュエータの性能を向上させることを目的に,実験的なアプローチにより印加電圧波形の改良を試みた.まず,正弦波,三角波,方形波(台形波)の基本波形の特性を調査し,正弦波が最も良い性能を示すことを明らかにした.PIV計測を用いた体積力場の詳細な解析から,印加電圧勾配が急な区間とそれに続く緩やかな区間を持つことが正弦波の高い性能の要因であると推測し,急勾配と緩勾配を組み合わせた新しい印加電圧波形を提案した.実験的なパラメトリックサーベイにより,提案した波形形状を最適化し,結果として60%の推力向上と100%の推力電力向上を達成した. 実験的に最適化した波形に対し,放電プラズマと流体運動をカップリングしたシミュレーションを実施し,性能向上のメカニズムが,電圧勾配のコントロールによる放電形態のコントール(急勾配で密な放電を発生させ,緩勾配でストリーマ放電を抑えつつプラズマを加速する)にあることを明らかにした. 印加電圧波形の改良と並行して,3電極型のプラズマアクチュエータの開発にも着手した.これは大気中に露出した電極を2つ持ち,片側にAC高電圧を,もう一方にDC高電圧を印加するもので,大きな推力増強を見込める.まず,放電プラズマのシミュレーションによる詳細なプラズマ運動の解析から,作動のメカニズムを明らかにすることに成功した.その知見は,今後の研究開発に大きく役立つものである. 次年度からのより正確な実験実施の為,実験装置の拡充を行った.具体的には,高精度PIV計測用の高解像度カメラ,放電電流計測用の高分解能オシロスコープなどを整備した.また,PIV計測した流れ場から体積力場をより正確に推定する新手法の提案と研究も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,プラズマアクチュエータの性能向上を達成できる印加電圧波形を,物理的な根拠をもとに提案することに成功した.実験的な実証にも既に成功しており(推力の60%向上,推力電力比の100%向上),また3電極型プラズマアクチュエータの研究開発にも着手できていることから,研究パートに関していえば当初の計画以上に進展している.次年度以降に重要になる実験環境の整備に関しても,必要な設備は揃ってきており,順調に整備できている.一方で,随伴解析に基づいた最適化手法のプラズマアクチュエータへの適用に関しては,若干計画より準備が遅れており,現在も支配方程式の定式化を実施中である.以上から,総合的に判断して,本研究課題は概ね順調に推移している.
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今後の研究の推進方策 |
印加電圧波形の改良に関しては,緻密な数値シミュレーションに基づいた新しい波形の提案と,性能評価実験・体積力場推定実験によるパラメトリックな研究による最適化を引き続き実施する. 3電極プラズマアクチュエータは,印加電圧波形最適化の研究成果と組み合わせることで,飛躍的な性能向上を達成できる可能性があり,今年度以降も引き続き研究開発を続行する.しかしながら3電極プラズマアクチュエータには,駆動パラメータに応じてジェット挙動が複雑に変化する問題があり,また高い性能を維持したまま小型化することにも成功していない.前年度に解明した作動メカニズムの知見をもとに,これらの課題を解決する方策を模索する. 随伴解析を用いた最適化手法については,放電プラズマについての支配方程式の定式化を引き続き実施する. 数値シミュレーションと実験,双方の密な連携が本研究の目的達成に必要不可欠であり,それぞれの信頼性と精度の向上は必須である.これらについても継続的に取り組んでゆく.
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