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2018 年度 実績報告書

結晶質岩の熱進化モデルの構築および化学的な長期変遷の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H06138
研究機関山形大学

研究代表者

湯口 貴史  山形大学, 理学部, 准教授 (00516859)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード熱進化モデル / 花崗岩(結晶質岩) / 熱年代学 / 割れ目充填鉱物 / 変質鉱物 / 長期変遷 / 地層処分
研究実績の概要

本研究は,割れ目充填鉱物と変質鉱物の生成時期・温度条件および岩石学的な特徴の相違を把握することで,二次鉱物の生成をもたらす流体の化学的特性の長期変遷の解明を行う。本研究は,土岐花崗岩体を対象とし,以下のSTEP1-3を経ることで,2016-2019年度の4ヶ年で達成する計画である。
【STEP1】花崗岩の形成と発達に係る熱進化モデルの構築 【STEP2】流体の情報を保存する割れ目充填鉱物と変質鉱物の岩石学的情報と形成温度・年代の解明 【STEP3】流体の化学的特徴の長期的な変遷の解明

2018年度は第一に【STEP1】の最終成果として「Position-by-position cooling paths within the Toki granite, central Japan: Constraints and the relation with fracture population in a pluton」を国際誌Journal of Asian Earth Sciencesに公表した。これは熱年代学的な手法により高温から低温までの連続的な花崗岩体の領域ごとのt-T pathを構築したものである。各領域のt-T pathが示す冷却速度の相違や類似性を検証し,花崗岩体の熱進化モデルを構築した。また、この過程で,ジルコンU-Pb年代と黒雲母K-Ar年代までの冷却過程と割れ目分布が関連することを見出した。
第二に花崗岩体で普遍的に生じる変質現象であるソーシュライト化と緑泥石化に焦点を絞り研究を行い,新たな知見(岩石学的・年代学的知見)を獲得した。これは【STEP2】「流体の情報を保存する割れ目充填鉱物と変質鉱物の岩石学的情報と形成温度・年代の解明」に寄与する。得られた知見を組み合わせることで,STEP3の一端となる流体の時間的変化を明らかにすることができた。この成果は「Role of micropores, mass transfer, and reaction rate in the hydrothermal alteration process of plagioclase in a granitic pluton」として,国際誌American Mineralogistに投稿を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2018年度は「研究実績の概要」で述べたように,「【STEP1】花崗岩の形成と発達に係る熱進化モデルの構築」および「【STEP2】流体の情報を保存する割れ目充填鉱物と変質鉱物の岩石学的情報と形成温度・年代の解明」に関する2つのテーマに対して研究を進捗させた。深成岩体の熱進化モデルを構築したテーマでは論文化・国際誌への掲載に至った。
また斜長石のソーシュライト化により熱水の化学的な特徴の変遷を明らかにする研究においてはデータ収集から論文化までの達成を実施した。当初計画以上の成果として,花崗岩体の領域ごとのt-T path(熱モデル)と割れ目の分布の間に相関があることを定量的に示した。このことは熱水や物質の移動経路である割れ目の分布評価を行う上でも,熱モデルが有用となることを国際誌上で示すことができた。以上のことを総合的に勘案し,「おおむね順調に進展している」と判断した。

今後の研究の推進方策

最終年度である2019年度には,STEP1とSTEP2のデータを統合し,STEP3となる花崗岩体中の流体特性の長期変遷について明らかにする計画である。特に,花崗岩体で普遍的に生じる変質現象である斜長石のソーシュライト化と黒雲母緑泥石化の岩石学的・年代学的知見をもとに熱水流体の長期的な変遷を解明する。また斜長石のソーシュライト化と黒雲母緑泥石化後のイベントである炭酸塩鉱物の沈殿に着目し,一連の化学的特徴の長期的な変遷を評価する。得られた成果は順次取りまとめ,日本鉱物学会や日本地質学会での学会発表を行い、国際誌における公表を目指す。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Position-by-position cooling paths within the Toki granite, central Japan: Constraints and the relation with fracture population in a pluton.2019

    • 著者名/発表者名
      Yuguchi, T., Sueoka, S., Iwano, H., Izumino, Y., Ishibashi, M., Danhara, T., Sasao, E., Hirata, T. and Nishiyama, T.
    • 雑誌名

      Journal of Asian Earth Sciences

      巻: 169 ページ: 47-66

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.jseaes.2018.07.039

    • 査読あり
  • [学会発表] わが国の花崗岩中の空隙分布に関する検討2018

    • 著者名/発表者名
      石橋正祐紀,笹尾英嗣,湯口貴史,森川佳太,村上裕晃
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2018
  • [学会発表] 土岐花崗岩体内部の冷却履歴の位置的な相違:相違をもたらす原因と割れ目との関連2018

    • 著者名/発表者名
      湯口貴史、末岡茂、岩野英樹、五十公野裕也、石橋正祐紀、檀原徹、笹尾英嗣、平田岳史、西山忠男
    • 学会等名
      日本地質学会第125年学術大会
  • [学会発表] 花崗岩体中の斜長石の熱水変質:微小孔の役割,物質移動および反応速度2018

    • 著者名/発表者名
      湯口貴史、菖蒲澤花穂、小北康弘、八木公史、石橋正祐紀、笹尾英嗣、西山忠男
    • 学会等名
      日本鉱物科学会 2018年年会
  • [学会発表] 熱水変質による花崗岩中黒雲母の緑泥石化機構の再考2018

    • 著者名/発表者名
      石井貴大,小暮敏博,菊池亮佑,宮脇律郎,湯口貴史
    • 学会等名
      日本鉱物科学会 2018年年会
  • [学会発表] カソードルミネッセンス像解析およびチタン濃度定量分析に基づく2018

    • 著者名/発表者名
      小北康弘,加藤丈典,湯口貴史
    • 学会等名
      日本鉱物科学会 2018年年会

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公開日: 2019-12-27  

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