研究課題
本研究では、特徴ある3つの磁場配位装置(NAGDIS-II、GAMMA 10/PDX、LHD)と数値シミュレーション(EMC3-EIRENE)を効果的に用いることで、磁場閉じ込め核融合装置の非接触プラズマ中における電離-再結合フロント構造の空間的・時間的な振る舞いを明らかにするとともに、非拡散的輸送発生との関係の調査、ならびに同輸送がもたらすダイバータ板への粒子束の低減効果を評価することを目的としている。H28年度は主にNAGDIS-IIにおける研究を大きく進展させ、その他の装置・計算コードについても次年度以降の研究推進ための準備を進めた。NAGDIS-IIでは、径方向・周方向分割電極をプラズマ中に挿入し、接触-非接触状態を急速に遷移させた際の静電揺動を計測・解析した。結果として、径方向中心付近において方位角方向モード数m=0の揺動が磁力線方向に局在して発生しており、同時に径方向周辺では渦状のプラズマ構造が顕著に吐き出されている様子が確認された。このとき周辺では粒子束の有意な増大も確認され、中心部の粒子束低減に対し径方向輸送が無視できない寄与をもたらしていることが示された。今後はより詳細な挙動の調査を行う。GAMMA 10/PDXでは筑波大学担当者と打ち合わせを行い、多チャンネル計測系の整備を一部進めた。LHDでは、ダイバータ粒子束分布の解析を高効率化するため、解析プログラムを一新し、データサーバへの登録を進めた。これにより、大規模データ解析のための環境を整えた。EMC3-EIRENE計算環境として、ワークステーションの導入および計算プログラムの移植を行った。
2: おおむね順調に進展している
H28年度に予定していたNAGDIS-II用の高時間分解能アナログ/デジタル変換器の整備はメーカー都合により遅れが生じたが、借用制度の活用により、分割電極計測に必要なチャンネル数での同時計測を実施した。アナログ/デジタル変換器購入のための予算は、繰り越し申請により次年度に整備する。GAMMA 10/PDXおよびLHDにおける研究準備、ならびに共同研究者との打ち合わせは順調に進んでいる。以上のことから、総合評価を(2)とした。
直線型装置NAGDIS-IIにおける実験・解析を進展させる。具体的には、再結合フロント下流のプラズマ中心付近で発生する低周波大振幅揺動に対し、沿磁力線方向の多地点同時計測を行う。揺動計測には、磁力線に沿う方向に掃引可能な静電プローブならびにマイクロ波干渉計を使用する。磁力線垂直方向に加え、磁力線方向も含めた構造解明は非拡散的輸送の増大メカニズム解明に有効であると考えられる。さらに電位計測を実施し、新たな分割電極の設計検討を行う。高時間分解能計測系についても増強を進める。タンデムミラー装置GAMMA 10/PDXでは、高時間分解能計測系の多チャンネル化のため、高耐圧の絶縁アンプを追加整備する。非接触放電ならびに接触~非接触状態への遷移実験において、ダイバータモジュール内に設置された多チャンネル静電プローブを用いてイオン飽和電流揺動の同時計測を実施する。NAGDIS-IIで観測されたのと似た大振幅揺動や、渦状の輸送構造の有無を確認するため、各種の統計的解析手法(Skewness、条件付き平均、経験的固有直交展開、等)を適用する。大型ヘリカル装置LHDでは、ダイバータ板に至る磁力線構造が複雑、かつ上流のプラズマパラメータに依存して粒子束分布が変化するため、接触・非接触状態における単純比較が困難となっている。そこでまず、過去に計測された多数の放電(~数千ショット)を対象とした多変量解析を実施し、ダイバータ粒子束分布のパターン分類を行う。その後、各パターンとプラズマパラメータ・磁力線構造の関係や、非接触化の影響がどのパターンと相関が強いかなどを調査する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Nuclear Materials and Energy
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http://www.ees.nagoya-u.ac.jp/~web_dai5/member/tanaka/jisseki/jisseki.html