研究課題/領域番号 |
16H06139
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 宏彦 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60609981)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非接触プラズマ / 非拡散的輸送 / 時空間構造 / 揺動解析 / 再結合フロント |
研究実績の概要 |
本研究では、特徴ある3つの磁場配位装置(NAGDIS-II、GAMMA 10/PDX、LHD)と数値シミュレーション(EMC3-EIRENE)を効果的に用いることで、磁場閉じ込め核融合装置の非接触プラズマ中における電離-再結合フロント構造の空間的・時間的な振る舞いを明らかにするとともに、非拡散的輸送発生との関係の調査、ならびに同輸送がもたらすダイバータ板への粒子束低減効果を評価することを目的としている。 NAGDIS-IIでは、径方向・周方向分割電極による多地点同時計測信号の解析から、径方向中心における方位角方向モード数m=0の粒子束低減時に渦状の構造のプラズマ吐き出しが現れており、シミュレーション研究との類似性が確認された。さらに、磁力線方向の挙動を明らかにするため、上流部の3チャンネルマイクロ波干渉計と下流部の2次元駆動静電プローブの同時計測を実施し、現在解析を進めている。 GAMMA 10/PDXでは、装置終端部に設置されたDモジュール中の静電プローブにより、イオン飽和電流揺動の多地点同時計測を行った。Blob/Hole様の正/負スパイク信号を初めて観測し、これらは接触状態から非接触状態への遷移時に特に顕著に現れている。NAGDIS-II実験との共通性・相違性がそれぞれ確認された。 LHDでは、1年間で収集された大規模データを対象とした多変量解析を実施し、ダイバータ粒子束分布の特徴付け手法を確立した。上流のパラメータに対する依存性を調べることで、これまで未知であった分布形状変化の原因がコアプラズマ周辺部における圧力勾配駆動電流によるものと推定された。 非接触プラズマ形成に重要な中性粒子について、EMC3-EIRENEを用いたJT-60SA周辺領域計算を行い、プラズマ計算メッシュを飛び出た粒子のモデルと中性粒子分布間の依存性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NAGDIS-IIおよびGAMMA 10/PDXにおいて、当初予定していた信号収集系の整備を完了し、課題申請時に計画していた実験を概ね実施した。ともに新しい知見が得られており、論文投稿済み、もしくは投稿準備中である。申請時にH30年度の実施を予定していたLHDにおけるガスパフイメージングの準備は、研究代表者の所属変更により遅れが生じている。代わりに、収集済み大規模データの解析環境を整え、接触・非接触条件比較を容易とするための粒子束分布の特徴付け手法を確立し、その変化要因を明らかにした(論文投稿準備中)。 以上のことから、総合評価を(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
NAGDIS-IIでは、H29年度までに2次元駆動静電プローブの有用性が確認されたことから、他の計測と組み合わせて条件付き平均法を適用することでパラメータ(温度、密度、電位)の時空間的な分布変化を評価し、加えて輸送挙動が大きく変わる条件を調査する。 GAMMA 10/PDXでは、Blob/Hole様の構造が確認されたが、多地点信号の相関解析の結果、径方向に非常に短い構造であることが予想される。垂直方向に駆動可能な静電プローブの利用も含めて、追実験の方法を検討する。 LHDでは、軽水素・重水素放電の比較を行い、ガス種が与える粒子束分布への影響を同定する。これにより異なるガス種間での非接触放電の影響の違いについて理解を深める。 シミュレーション研究として、新たに2次元流体コードLINDAを用いた非接触プラズマシミュレーションを開始する。LINDAでは間欠的輸送を直接取り扱うことはできないが、拡散係数を人為的に増加させることで模擬することが可能である。さらに、詳細な原子分子過程を取り入れた中性粒子輸送コードとのカップリングを進めることで、輸送以外の粒子束低減効果を計算に取り入れる。将来的には、実験比較を通して、輸送を含む各現象が粒子束低減へ寄与する割合を評価する。
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