研究課題
高等動物が外界の情報に対して適切な行動を選択するためには、発生の過程で脳に存在する神経回路が個体差なく正確に形成される必要がある。一般に神経回路は、遺伝子に規定されたプログラムに加えて、臨界期に生じる神経活動による精緻化を経て完成される。この回路構築の具体的な分子メカニズムの理解は、動物の先天的な行動と学習によって変化する可塑的な行動原理を理解する上で重要な示唆を与える。マウスの一次嗅覚系は神経回路構造が明瞭であることと遺伝学的手法による介入実験の簡便さから神経回路形成の優れたモデルとなっている。これまでの我々の先行研究などを含め回路形成の遺伝的プログラムに関しては多くの知見が提供されてきたが、神経活動による精緻化のプロセスについては具体的なメカニズムは明らかにされてこなかった。神経活動に依存した回路の精緻化は、ヘブ則“Neurons that fire together wire together.”と表されるように、神経細胞間の同期的な発火活動によると多くの教科書に記載されている。しかし我々の高速カルシウムイメージング及びオプトジェネティクスによる嗅神経の活動の観察、操作を通じて、ヘブ則には当てはまらない全く新しい神経活動依存的な回路形成のメカニズムを明らかにした。我々は、嗅覚神経細胞で発現する単一の嗅覚受容体分子が、細胞の自発活動パターンを規定し、その受容体に固有な自発活動のパターンが複数の細胞接着、反発分子の発現量を調節し軸索の収斂、ひいてはシナプス形成機構を制御することを明らかにした。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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European Journal of Neuroscience
巻: 48 ページ: 3246-3254
10.1111/ejn.14099
PLOS one
巻: 13 ページ: e0201871
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