研究課題/領域番号 |
16H06147
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木戸屋 浩康 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (00543886)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血管新生 / 腫瘍 / 癌治療 |
研究実績の概要 |
固形腫瘍が成長・増大化していくためには、腫瘍組織内に引き込んだ血管を介した、酸素・栄養分の供給が必須である。そのため、腫瘍血管の抑制することでがん治療を目指す「血管新生抑制療法」という概念が提唱され、数多くの血管新生抑制剤が開発されてきた。しかしながら、これらの血管新生抑制剤は当初期待されていたような劇的な血管新生抑制作用を示すことはなかった。本研究では、血管新生抑制剤の効果が限定的である理由に明らかにするため、独自の視点から腫瘍血管形成の解明を進めている。 平成29年度は、血管新生抑制剤の投与後に腫瘍組織中に増加するミエロイド系細胞に注目し、様々な癌種をマウスに移植したモデルにて検討した。その結果、血管新生抑制剤の効果が弱い癌腫においてのみ、ミエロイド系細胞の増加が認められた。この細胞の特徴づけを行うため、腫瘍組織中のミエロイド系細胞をシングルセルにて遺伝子発現解析を進めた。その結果、腫瘍組織には幾つかのミエロイド系サブセットが混在しており、血管新生抑制剤に応じて増加するのはその一部であることが明らかとなった。現在は、血管関連ミエロイド系細胞と名付けたこの細胞群が、どのような分子機構にて血管新生抑制剤への耐性をがんに与えているのかを解析している。また、血管関連ミエロイド系細胞の生体イメージングを行うため、特異的に発現する遺伝子のプロモーター下で蛍光タンパク質を発現するイメージングマウスを作成した。腫瘍血管特異的に蛍光を発する遺伝子改変マウス(apelin TdTomato BAC Tg)と掛け合わせることで、血管が減少した後にどのように血管関連ミエロイド系細胞が集積し、癌細胞に働きかけるのかを観察する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した研究計画について、多様な癌種の移植モデルにおける検討や、ミエロイド系細胞の解析および血管新生抑制剤に応答するサブセットの同定が順調に進んでいる。血管新生抑制剤に対する治療抵抗性を生むメカニズムとして考えられる「血管束移動」の改正期のためのイメージングマウスも作成できており、上記の理由から「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
概ね申請書に記載した研究計画にて進行しており、平成30年度も計画書の内容に沿う形で研究を進めていく予定である。具体的な研究計画は以下に示す。 1:腫瘍組織における血管束移動の定義付け マウス胆癌モデルを用いた生体イメージング解析系にて、引き続き腫瘍血管の形成機構を解析する。特に、血管新生阻害剤を投与した後に血管関連ミエロイド系細胞がどのように集積して、腫瘍血管や腫瘍組織に働きかけるかを明らかにする。さらに、シングルセル解析にて同定された分子群の関与を検討し、血管新生阻害剤に対する治療抵抗性が獲得される過程を可視化する。 2:血管束移動を制御する分子・細胞群の解析 これまでの解析にて同定された血管関連ミエロイド系細胞に注目し、腫瘍組織中に動員して分化させる分子機構をシングルセル解析の結果をもとに検討する。候補分子に対しては、阻害剤などを用いて癌治療に繋がるかを解析する。また、作成している血管関連ミエロイド系細胞を特異的に欠失するマウスを用いて、腫瘍増大におけるこの細胞群の役割を解明する。
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