研究課題/領域番号 |
16H06149
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
茶本 健司 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (50447041)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | PD-1 / ヘルパーT細胞 / B細胞 / キラーT細胞 / Foxp3 |
研究実績の概要 |
PD-1抗体がん免疫治療におけるCD4+T細胞の役割は不明点が多い。PD-1抗体治療におけるeffector CD4+T細胞(non-Treg)、Treg、exTregの出現割合とその出現メカニズムを解明する。またこれらの細胞が細胞性免疫・体液性免疫に与える影響を検討することが本研究の目的である。以下、28年度の2つの主な計画の結果について述べる。 1)Foxp3-GFP CREKI ROSA26-RFPKIマウスを用いた解析 様々な腫瘍に対して野生型マウスを用いてPD-1阻害抗体の抗腫瘍効果を検討し、マウス大腸がんMC38が感受性、マウス肺がんLLCが半感受性、B16, EG-7は体抵抗性である結果を得た。そこで感受性であるMC38をFoxp3-GFP CREKI ROSA26-RFPKIマウスに投与し、PD-1シグナルを抗体にて阻害したところ、PD-1阻害抗体を投与したマウスの群にてeffector CD4+T細胞(non-Treg)とexTregがともに増加した。PD-1-/- floxマウスについては現在C56BL/6への戻し交配を実行している。 2)細胞性免疫/体液性免疫増強メカニズムを行うための基礎検討解析 体液性免疫の重要性を検討するためにclass switchを起こさないAID-/-マウスと成熟B細胞を欠損するuMT-/-マウスにMC38と接種しPD-1阻害抗体治療法を行った。その結果、野生型マウスと比較し、抗腫瘍効果は両マウスにおいて著しく増強された。この結果はB細胞が抗腫瘍効果の最終エフェクターであるT細胞の分化・活性化に重要な役割を果たしていることを意味する。一方で、CD8+T細胞を抗体にて除去すると、PD-1阻害抗体による抗腫瘍効果は著しく減弱した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Foxp3-GFP CREKI ROSA26-RFPKIマウスとPD-1-/- flox マウスを交配してFoxp3+ T細胞にPD-1が発現していないマウスの作成を実施している。現在PD-1-/- flox マウスのC57BL/6への戻し交配を行っているが、昨年度はマウス施設の都合(感染等)により、戻し交配に遅れが生じた。しかし、他のFoxp3-GFP CREKI ROSA26-RFPKIマウスを用いたeffector CD4+T細胞(non-Treg)、Treg、exTreg解析は順調に進んでいる。また、進めている間に新たな課題も見えてきた。PD-1阻害抗体を用いた免疫治療においCD4+T細胞として全体では抗腫瘍免疫を負に制御するのか正に制御するのか新たな検討が必要である。 細胞性免疫/体液性免疫増強メカニズムを行うための基礎検討解析は計画通りすすんでいる。 全体として、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)Foxp3-GFP CREKI ROSA26-RFPKIマウスを用いた解析 CD4+T細胞は上記に示すように様々なサブセットに分けることができるが、まずはCD4+T細胞全体として、CD8+T細胞を介したPD-1阻害抗体治療をどのように制御しているか新たに検討を加える。その上でeffector CD4+T細胞(non-Treg)、Treg、exTregの各サブセットにわけ、それぞれが細胞性免疫と体液性免疫にどのように働くかメカニズム解析をする。
2)細胞性免疫/体液性免疫増強メカニズム B細胞が未熟もしくはそのほとんどを欠損するマウスでは腫瘍の増殖が遅れるばかりか、PD-1阻害抗体治療効果を増強する作用を確認できた。しかし、これらのマウスでは生まれた当初からB細胞に以上があるマウスである。成熟した野生型マウスからB細胞を抗体にて短期間除去した場合においても抗腫瘍効果が増強されるか検討する必要がある。また28年度の結果より。effector CD4+T細胞がどのようにB細胞を介した体液性免疫に影響を及ぼすかだけでなく、逆にB細胞がどのように各CD4+T細胞サブセットさらにキラーT細胞に影響を及ぼすかも相互的に解析する必要がある。
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