研究課題
PD-1阻害時における細胞性免疫/体液性免疫の抗腫瘍免疫における影響は不明点が多い。昨年に引き続き、キラーT細胞、Treg、B細胞と抗体を中心に細胞性免疫/体液性免疫を介した抗腫瘍免疫増強メカニズムを総合的に検討した。1)Foxp3-GFP CREKI ROSA26-RFPKIマウスを用いた解析昨年から行っているPD-1-/- flox マウスのC57BL/6への戻し交配が完了した。現在、Foxp3-GFP CREKI ROSA26-RFPKIとの交配を進めている。本マウスを用いることでFoxp3+の細胞上に発現するPD-1の意義を明確にすることができる。mTOR阻害剤により、exFoxp3の出現抑制されることを示唆する結果が得られた。2)細胞性免疫/体液性免疫増強メカニズムを行うための基礎検討解析AID-/-マウスやuMT-/-マウスのようにB細胞の一部、もしくは完全に欠陥マウスだけでなく、成熟した野生型マウスから抗体にてB細胞を除去したマウスでも一定の割合で抗腫瘍効果の増強が認められた。AID-/-マウスやuMT-/-マウスから単離したCD8+T細胞をCD3-/-マウスに投与し、腫瘍接種、PD-1阻害抗体治療を行った結果、腫瘍増殖は野生型マウスから単離したCD8+T細胞を投与したマウスに比べ抗腫瘍効果が増強した。このことはこれらB細胞(体液性免疫)が欠損するキラーT細胞はもともと高い抗腫瘍効果を有したT細胞であることを示唆している。またこれらの高い抗腫瘍効果にはIgA産生の違いによる腸内細菌も影響している可能性を示唆するデータが得られた。この結果は当初予定していなかった発見である。
2: おおむね順調に進展している
AID-/-マウスやuMT-/-マウスでは腸内細菌層の構成の違いも免疫反応(力)に関与しているという当初予想していなかった結果も得られてきたが、全体的には概ね順調に進行している。
1)Foxp3-GFP CREKI ROSA26-RFPKIマウスを用いた解析Foxp3-GFP CREKI ROSA26-RFPKIマウスとPD-1-/- flox マウスの交配を進め、得られたマウスにがんを接種する。Foxp3発現経験細胞特異的にPD-1分子を欠損することが、どの程度腫瘍増殖抑制に寄与するのか明らかにする。去年に引きつづきmTOR/AMPK経路の代謝を中心にnon-Treg、Treg、ex-Treg、iTreg、ex-iTreの出現と機能制御を検討する。2) 細胞性免疫/体液性免疫増強メカニズム解析これまでにAID-/-, uMT-/-マウスのようなIgAを欠損もしくは、B細胞を欠損したマウスにおいては野生型と比べて抗腫瘍効果に大きな差が見られ、それはCD8+T細胞機能に由来する結果が得られている。本年度は、これらのマウスにおけるキラーT細胞、Tregの割合、分化、樹状細胞の活性化を詳細に検討し、細胞性免疫と体液性免疫のクロストークについて検討する。また当初の計画にはなかったが、本研究の過程でIgA欠損による腸内細菌叢の変化も末梢の抗腫瘍免疫に大きな影響を及ぼすことが明らかになってきた。腫瘍免疫と体液性免疫/腸内細菌叢の関与も視野に入れ検討する。
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